<J1:鹿島1-0大分>◇第11節◇25日◇カシマ

 鹿島が未勝利地獄から抜け出した。リーグ7戦未勝利で迎えた大分とのリーグ再開戦は、後半21分に途中出場のMFダニーロがヘッド弾を決めて、1-0で逃げ切り勝ちした。4月5日千葉戦以来81日ぶりのリーグ戦白星で、首位浦和との勝ち点差も4に縮め、4位に浮上した。G大阪もMF遠藤の得点で1-0と京都を下して5位とし、優勝争いに踏みとどまった。

 王者が終盤に誇りを示した。1-0で迎えた後半44分。左サイドを大分MF金崎に突破され、ゴール前フリーだったFW前田にパスが渡る。スタンドから悲鳴が上がりかけた瞬間、全力で戻ったMFダニーロが滑り込んでボールをはじいた。ブラジル人助っ人は、後半21分に自ら決めた先制点に浮かれることなく、守備に戻ってチームを救った。DF岩政がダニーロを強く抱き締めた姿に、プレーの重みが表れていた。

 主将のMF小笠原は語気を強めて、勝敗を左右したプレーを振り返った。「当たり前だけど1人1人が頑張った。それがちょっとずつ欠けてもチームとしては大きくなる。攻守の切り替えの速さや頑張りは、うちの生命線だから」。11冠を勝ち取った伝統の力でリーグ戦8試合ぶりの勝利を引き寄せた。

 7戦未勝利でリーグ中断期に突入した。DF内田は代表招集でチームを離れている間も、鹿島の状況を気にし続けた。報道陣に「鹿島、どうなっている?」と逆取材。W杯予選を戦う日本代表の責任と喜びを感じる一方で「鹿島は本当にいいチームなんですよ」と愛着を強調した。この日はW杯予選の最年少弾を決めた22日のバーレーン戦から中2日での先発。本来のプレーができず「変な汗が出た」と心身に重圧を感じながらも、走り回った。

 引き分け以下なら99年の8戦未勝利のクラブワースト記録に並んでいた。「(7戦未勝利の記録は)いい意味で忘れていた。もちろん負けた悔しさは忘れていないけど」と小笠原。スランプを乗り越え、プライドを取り戻した鹿島の反攻が、いよいよ始まった。【広重竜太郎】