<J1:横浜1-0札幌>◇第22節◇24日◇ニッパ球

 前節まで16位の横浜が、MF小宮山尊信(23)の決勝弾で、7節ぶりに降格圏から脱出した。最下位札幌との負けられない一戦に、得意の右足ミドルシュートで決着をつけた。守備でも13試合ぶりの完封勝利に貢献。練習遅刻の罰として丸刈り頭で臨んだ試合で、大きな仕事をやってのけた。チームも前日に浦和に敗れた磐田を勝ち点で逆転し、ついに15位に浮上。ようやく巻き返しへのきっかけを得た。

 輝く頭部が、降格圏に沈むチームに幸運をもたらした。後半9分。小宮山は味方CKのこぼれ球を拾うと、狙いすまして右足を振りぬいた。「ボールがうまく足に乗った感じ。前半からミドルを打ってて感触が残っていたのがよかったかも」。シュートがネットに突き刺さった瞬間、イレブンは殊勲者を取り囲み、丸刈りの頭をたたきまくった。手荒い祝福がやむと、自らも頭部を指さして笑った。

 試合後のヒーローインタビューでは、ゴール裏スタンドの観客に「結果の出せない丸刈りは、ただの丸刈りですから」と胸を張った。だが青い頭は、実は遅刻の代償だった。「罰です。いろいろあったんで」。23日には早朝ミーティングだけでなく、練習にも14分遅刻。練習後選手会は罰金額を決めるあみだくじを小宮山に引かせた。実は金額の下にすべて「+丸刈り」と書かれてあった。

 わなにはまった小宮山は、すぐにバリカンの餌食になった。しかも当初は、頭部右半分のみを刈ったところで、バリカンを止められた。そのままの姿で昼食会場に現れ、さらし者扱いを甘んじて受けることで反省の気持ちを周囲に伝えた。

 最高額の「10万円+丸刈り」のくじを引いた“強運”は、翌日の試合でもいかんなく発揮された。あざやかな先制弾は、チームを7試合ぶりに降格圏から脱出させた。クラブにとってもホーム通算150勝目という、区切りの勝利。4月29日千葉戦以来、13試合ぶりの完封勝利というおまけまでついた。マン・オブ・ザ・マッチの賞金で「罰金もチャラになりました」という。「触ると御利益?

 もちろんあります!」という小宮山の頭部を旗印に、横浜が巻き返しを開始する。【塩畑大輔】