<J1:神戸1-0浦和>◇第29節◇18日◇埼玉

 浦和のJ王座奪回&アジア連覇に暗雲が漂った。後半37分に痛恨の失点を喫し、神戸に0-1で黒星。残り5戦で首位との勝ち点差は6に広がった。FW永井雄一郎(29)がエンゲルス監督(51)との意見の食い違いで、自らベンチ外を選択。アジア・チャンピオンズリーグ(ACL)準決勝第2戦G大阪戦(22日)を前に、アジア王者の足もとが揺らぎ始めた。

 浦和サポーターの罵声(ばせい)を浴びた闘莉王がピッチ上で号泣した。他選手に抱きかかえられて何とか観客に頭を下げたが、ブーイングの嵐はやまない。阿部は「ブーイングは当然。期待に応えたいけど応えていない」と言えば、高原も「自分たちが恥ずかしい」と猛省した。8月23日磐田戦以後、約2カ月もホーム勝利がない。今季8敗目でV戦線から遠ざかった。

 神戸戦では昨季ACLのMVP男永井がベンチから外れた。8日ACL準決勝第1戦のG大阪戦に続く2戦連続のメンバー外。前回はエンゲルス監督が故障を理由に挙げたが、永井は故障なしを主張し、食い違いがあった。今回は前日17日に両者が約20分間、話し合った。しかし永井は自らベンチ外を選び、サテライトで練習。スタジアムにも姿を見せなかった。

 永井

 監督と選手の一線を越えてはいけない。ただ僕の立場で言えることは言いました。(最初から)帯同したくないとは言っていない。話の流れもあって、そういうことならばコンディション的にも今後のことを考え、これがいいだろうと思った。

 9月3日の練習中に、永井は指揮官と激しく口論した。昨季はFWで「ここぞの一撃」を連発し、クラブW杯3位に貢献した自負もあり、MFや右サイドでの起用に不満があった様子。長髪を短く切った永井は「自分が(チームから)出ていかなければいけないかもしれないし、今後、良い関係を築けるかもしれない」とし、指揮官も「長引くことはない」と歩み寄る姿勢はあるが、予断は許さない状況だ。

 永井不在を物語るようにこの日の浦和は後半からスピード感を欠いた。後半11分に右太もも筋膜炎から復帰したFW田中達が登場したが、次第にロングボール主体の攻撃となり、持ち味を出せなかった。山田は「勝たなくてはいけないプレッシャーがあった」と言えば、エンゲルス監督も「プレッシャーに負けたように感じた」。経験豊富な永井がいれば…。「ここぞの一撃」が欲しい展開だった。

 残り5戦で暫定首位の鹿島と勝ち点6差の5位。J制覇は赤信号となったが、田中達は「最後じゃなくて先に負けて良かったと。残り全部勝てば何かが起きるかも」と前を向いた。火種を残したまま、浦和は正念場を迎えた。【藤中栄二】