サッカーの天皇杯4回戦(5日)で主力選手を温存して敗退した大分と千葉が、来年度の同杯シード権をはく奪される可能性が出てきた。日本協会は10日、都内のJFAハウスで開いた常務理事会で2クラブの処分案を検討した。犬飼基昭会長(66)は処分案として、J1クラブに与えられるシード権を大分と千葉からはく奪し、来年度は同杯県予選からベストメンバーでの出場を義務づける案を挙げた。14日の理事会でも議論を重ね、具体的なペナルティーを決定する。

 天皇杯の権威を失墜させかねないJクラブの姿勢を、許すわけにはなかった。日本協会はこの日の常務理事会で追加議案として大分と千葉の処分について検討した。犬飼会長は「権威ある大会だし、全力でやるのは当たり前。(本来なら)来年出る資格はない。シード権をはく奪して、県大会の1回戦からベストメンバーで戦うとか、制裁する」と明言した。Jリーグ側とも協議し、14日の理事会で「厳罰」を科す方針で一致した。

 5日の天皇杯4回戦が、議論の発端だった。大分は1日のナビスコ杯決勝に出場した主力10人を温存し、J2鳥栖に0-2で完敗した。千葉も主力選手6人をスタメンから外し、清水に0-1で敗れた。Jリーグ鬼武チェアマンもこの日「千葉も大分と同列。ルールを改正しなければ」と天皇杯でもベストメンバー規約を設ける考えを示した。

 現在、天皇杯は高校年代以上の協会登録チームであればエントリーできる「オープン大会」。実力差を考慮して、J1チームには決勝大会4回戦が初戦となるシード権を与えられているが、春先の県予選1回戦から出場となれば、リーグ戦やナビスコ杯、アジアチャンピオンズリーグと日程が重なる。日中は天皇杯、夜はリーグ戦の「ダブルヘッダー」や、アジア制覇を狙う一方で、趣味で楽しむ愛好者チームと「ベストメンバーで真剣勝負」ということも起こり得る。

 大分と千葉への「厳罰」は限られた戦力で過密日程をこなす他のJクラブにとってもひとごとではなく、強い反発も予想されるが、それだけ協会幹部の怒りと改革への意志は固い。犬飼会長は公式戦や代表チームの活動日程、選手の契約期間も含め「シーズン制を変えれば、全部がうまくいく」と話し、検討中の秋春制移行を視野に入れつつ、今回の処分に踏み切るつもりだ。【山下健二郎】