他力は無用-。J2山形の小林伸二監督(48)が19日、J1昇格を自力でつかみ取る姿勢を明確にした。現在2位の山形は、早ければ23日のホーム熊本戦で自動昇格が決まるが、その前日の22日に勝ち点5差で追う3位仙台の結果次第という条件付き。それよりも、残り3試合で2勝すれば文句なしで2位が確定する優位性を強調。他人頼みの甘い考えも、周囲に漂う昇格決定ムードも意識せず、誰も届かない勝ち点「76」以上を狙う。

 小林監督に迷いはなかった。22日に3位の仙台(アウェー横浜FC戦)が引き分け以下に終わり、山形が23日の熊本戦で勝てばJ1昇格が決まる好機にも「仙台が負けるなんて、まったく考えてない。うちは今、仙台より少し上にいるんだから、残り3試合で2勝すればいい」と話した。単純だが、最も確実な方法として、勝ち点を積み上げる意識を高めた。

 そんな指揮官の冷静さをよそに、現実問題を抱えるクラブの周辺は騒がしい。フロントはJ1昇格に向けた補正予算案を策定。約3億円を県から借り入れ、J1入会金6300万円など悲願達成に伴う支出増に対応する方針を固めた。23日の熊本戦に間に合うように昇格記念Tシャツも制作済みだ。しかし、指揮官は地に足をつけていた。「自分たちは23日に照準を合わせるだけ」。2勝すれば山形の勝ち点は77に伸び、勝ち点66の仙台が残り3試合に全勝しても届かない。

 指揮官の思いに呼応したように選手も集中した。この日の練習では、みぞれが肌を刺す寒空の下、熊本戦を意識してサイド攻撃の精度を上げた。風邪が完治し前日18日の練習から復帰した主将のMF宮沢は「仙台の(22日の)結果は、どうしても耳に入ってくる。でも僕らは勝ち点を積み上げるだけ」と言った。ライバルの動向に乱される必要がないことを、イレブンも分かっている。【木下淳】