浦和のフォルカー・フィンケ新監督(60)が、V奪還への第1歩で「守備力再生」に着手した。宮崎合宿2日目の17日に行われたゲーム形式の練習で、昨季まで主流だった3バックではなく、4バックを想定して実施。就任後初の戦術的な指導で早くも改革に乗り出した。昨季終盤に失速した原因を突き詰め、守備への意識を高めた。18日の福岡大との練習試合で、新体制下の「初陣」に臨む。

 指揮官の言葉に、緊張感が一気に高まった。8対8のミニゲームを中断したフィンケ監督は顔を紅潮させ、選手たちを見回しながら言い放った。「昨季のVTRを見ると、最終ラインでボールを持った選手が孤立している。どちらかのサイドバック(SB)が上がれば、もう片方は残ってバランスを取れ」。自陣でも素早くパスをつなげるよう、選手間の距離に目を光らせ、ピッチ内に設定したオフサイドラインよりDF陣が後退すれば、すかさず修正を求めた。

 7位に終わった昨季リーグ戦で、浦和は42失点。全18チーム中6位タイの少なさで、極端に多いわけではない。だが、シーズン終盤での大量失点や拮抗(きっこう)した試合での競り負けが目立ち、6年ぶりの無冠に終わった。信藤チーム・ダイレクターは「練習の中に(戦略の)要素が入っていた。選手たちに考えを伝えた内容」という。初めての戦術的指導が守備だった点に、王座奪還を目指す監督の方針が表れた。

 GK山岸は「(指示は)4バックの鉄則と言えるものだった。僕らはプロなので自然とできると思うけれど、監督からはっきりと言われたことで意思統一できる」と話した。浦和といえばこれまで、堅守速攻の3バックが代名詞。頂点を極めてきた従来のスタイルからのモデルチェンジをうかがわせる「4バックの基礎練習」だった。

 18日には、新体制下で初めての対外試合として福岡大と練習試合を行う。「今年は改革の年」というフィンケ監督が、いよいよ浦和再生への第1歩を踏み出した。【山下健二郎】