浦和のフォルカー・フィンケ監督(61)が新フロント陣に「直接会談」を要求した。3日、さいたま市内でクラブの取締役会が開かれ、藤口光紀社長(59)らの退任が決まった。現フロントと二人三脚でチーム再建に取り組んできた同監督は「コミュニケーションを取れなければ、仕事ができなくなる」と危機感を募らせ、24日の株主総会を経て就任する橋本光夫新社長(59)との早期の話し合いを求めた。クラブ内部に不安を抱えたまま、4日の大分戦(埼玉)に臨む。

 フィンケ監督にとって、切実な願いだった。大分戦を翌日に控える中でクラブ側から発表された、フロント陣一新。選手たちを動揺させないよう、感情を押しとどめて落ち着いた口調に努めたが、現場を預かる者として必要最低限の要求だけは、メディアを通じて伝えたかった。「新しい首脳陣とコミュニケーションを取りたい。そうでなければ、仕事ができなくなる」。厳しい表情で話した。

 6年ぶりの無冠に終わった浦和の再建を藤口社長に託され、就任した。「このチームをどんどん成長させてほしいと言われていた」。人とボールが連動する、これまで浦和になかった新スタイルを確立するため、今季はあえて優勝の2文字を意識せず、外部からの大型補強も凍結。原口や山田直らユース出身の若手を育成しつつ、腰を据えたチーム強化に取り組むことでフロント陣と方針を共有していた。

 だが、シーズン開幕直後に最大の理解者だった藤口社長以下、常務取締役3人が一気に退陣。これまで接点のなかった新首脳陣と足並みをそろえられるのかは未知数。だからこそ、同監督は「私の方からコミュニケーションを取っていきたい。定期的にやっていけば、誤解が生じることはない」と語気を強めた。

 就任1年目の今季契約は手続き上、1年。だが、クラブ側からは複数年での土台づくりを打診されている。それも体制が一新した今となっては白紙に近い。今後、新体制との方針に大きな食い違いがあれば、監督交代の可能性もあり得る。現在リーグ戦は1勝1分け1敗の勝ち点4で8位。当初から「現場の責任は自分が負う」と再建への決意を口にした同監督は、就任直後でいきなり背水の戦いを強いられそうだ。【山下健二郎】