<J1:山形1-1鹿島>◇第7節◇25日◇NDスタ

 リーグ王者・鹿島から、モンテ戦士が貴重な「勝ち点1」をもぎ取った。不運なPKで先制されたが0-1の後半7分、FW長谷川悠(21)が5試合ぶりの同点ゴール。今季最多1万6658人の観衆が詰めかけた一戦で「お祭り男」が、宣言通りのゴールを挙げドローに持ち込んだ。17日のG大阪戦で逆転負けしたショックも一掃。チームに自信を植え付ける意味でも、価値ある1発だった。

 勝ち点1を分け合った両者は、表情までも明暗を分け合った。ゴールを決めた長谷川を中心に、笑顔でハイタッチを繰り返すモンテ戦士。王者から勝ち点を取ったイレブンに、大観衆の歓声が降り注ぐ。ピッチのあちこちでひざに手をついた鹿島は、冷たい雨に打たれながら、まさかの結果を受け入れるしかなかった。

 1点を追う状況にスタジアムは静まり返っていた。その空気を後半7分、長谷川が一変させる。右サイドでショートパスをつなぎ、FW古橋がファーサイドへ絶妙なクロス。「点を取れると思います」と予告していた長谷川が、全身のバネを使って跳び上がった。コース、高さとも申し分ないヘッド弾は、3月7日の開幕磐田戦以来、7週間ぶりの今季3得点目。王者のゴールマウスをこじ開けたヒーローは「すごく自信になります」と、うれしさを隠せなかった。

 大観衆の前で結果を出し続けてきた「お祭り男」のゴールは、チームにも自信を回復させた。前節はアジア王者G大阪に逆転負け。この試合を落とせば「J1の壁」にブチ当たる可能性もあった。だが昨季ナビスコ杯王者の大分を含め「タイトルホルダー3連戦」で1勝1分け1敗。チームが確実に進化を遂げていることは「自分の中に少し(J1で)やれるかな、というのが見えてきた」と満面の笑みで話した小林監督の言葉にも表れている。

 長谷川はじめ選手は口々に「1点取られても気持ちが落ちなかった。鹿島は足が止まっていた」と顔を上げていた。そんな姿に指揮官も、ハーフタイムに「点を取れる可能性があるぞ」とゲキを飛ばし選手も応えた。チーム最多5本のシュートを打った長谷川は「僕がもう1点入れられるようになれば、僕もチームもレベルアップする」と真剣な表情で話す。現状に満足せず、少しでも成長したいという監督、イレブンの姿勢が、さらなる進化を促す。【山崎安昭】