<ナビスコ杯:浦和2-1清水>◇15日◇準々決勝第1戦◇埼玉

 浦和DF田中マルクス闘莉王(28)は「オレが蹴る」と決めていた。前半23分に原口がペナルティーエリア内で相手に倒されると「PKは社長(=最も責任がある人物)が蹴ればいい」と自らボールを両腕でつかんでPKをセット。本来ならFWエジミウソンの担う役割を買って出た。相手GKの逆を突く右足の一撃で、先制点を奪取。ハットトリックを達成した08年7月17日東京V戦以来のPKでの得点だった。

 故障で戦列を離れているDF坪井、MF山田直に続いて、前日14日の練習中にMF鈴木が腰を痛めて欠場。一人二役以上の働きが必要と感じた。「ファンと一体になってサッカー界を盛り上げる。常にその重圧を感じて、自分の力に変えてきた」。この日の観客数は、今年5月のナビスコ杯予選リーグ新潟戦の2万7446人を下回る、埼玉スタジアムでの主催試合で過去最少の2万1271人。ナビスコ杯奪回への一戦で、闘志をむき出しにプレーする原点に立ち返った。

 後半15分には、前線に駆け上がってクロスバー直撃の左足シュートを放ち、こぼれ球を頭で押し込んだエジミウソンの勝ち越し弾を「アシスト」。観客席の「闘莉王コール」に何度も左胸をたたいて応えた。「また、コールが聞けるように頑張ります」。ヒーローインタビューでの誓いが、王座奪回を願う赤きイレブンとサポーターの思いを1つにした。【山下健二郎】