<J1:神戸1-0鹿島>◇第22節◇19日◇ホムスタ

 日本代表の神戸FW大久保嘉人(27)が「秒殺ゴール」を決めた。過去8戦7発と相性のよかった鹿島相手に、開始わずか31秒で先制弾を奪い、1-0の勝利に貢献。今季初めて視察に訪れた日本代表岡田監督の前で、10年W杯南アフリカ大会でのエースの座を大きくアピールした。この日は首位鹿島をはじめ、上位4チームがすべて負けた。

 大久保の嗅覚(きゅうかく)が見事な先制ゴールを呼んだ。開始わずか31秒。DF近藤のロングスローが相手DFの胸に当たり、ボールは目の前にこぼれてきた。右足でちょこんと合わせ、歓喜の雄たけびを上げた。J最少失点を誇る首位鹿島のゴールを簡単にこじ開けた。04年11月7日以来、約5年ぶりの鹿島戦勝利にも貢献だ。

 「疲れたよ。しんどい。全然、大丈夫じゃないよ。でも、ロングスローの練習はずっとやっていたんで。練習通りの形。うまくいった」。今季初の「御前試合」で結果を出した。日本代表岡田監督が視察した試合は8戦6発と量産。しかも、首位の鹿島戦は先発すれば9戦8発と「シカ狩り」は大の得意だ。「(岡田)監督が来ているとか、関係ないよ。自分に与えられたプレーをするだけ」と淡々と言った。

 ボルフスブルクから復帰後、ゴールを決めた試合で初めて勝てたことが何よりうれしかった。帰国後すぐの紅白戦、DFラインでパスを回している後輩に「そんなんでボール支配ができたって満足してちゃいかん。厳しいところにパスせな」と練習中に怒鳴ったこともある。神戸でのプレーがすべて日本代表につながると考えていたから、練習に打ち込む姿勢にも真剣さが増した。

 90分間、前線でボールを追い続け、守備でも三浦体制2試合連続無失点にも貢献した。「神戸のサッカーは代表に似ている。攻撃の選手も、もっと守備をせなあかんのよ」。岡田ジャパンの目標はW杯4強。世界の強豪国を打ち破るには、前線からこまめにボールを追って、少ないチャンスをものにするしかない。9月のオランダ遠征ではカターニャFW森本の招集が濃厚だが「そんなん意識せんよ。あいつはあいつ」と受け流した。神戸復帰後、8戦4発。大久保の完全復活は岡田ジャパンにとって朗報だ。【奈島宏樹】