<J1:浦和3-2C大阪>◇第4節◇27日◇長居

 浦和FW田中達也(27)が、W杯南アフリカ大会に向けた日本代表復帰へ、504日ぶりのゴールで完全復活を印象づけた。前半21分、ゴール前のこぼれ球を右足で蹴り込み、08年11月8日の札幌戦(札幌ド)以来となる公式戦ゴールで勝利に貢献した。相次ぐ故障で1年間、日本代表から遠ざかるが、W杯イヤーを迎えて好調を維持。29日に発表される4月7日の国際親善試合セルビア戦(大阪・長居)での日本代表入りに向けて、最後のアピールをした。

 久しぶりに味わうゴールの感触が、大きな喜びとなって全身を駆け抜けた。前半21分。田中は、MF柏木の左クロスに呼吸を合わせてペナルティーエリア内へ駆け込んだ。相手DFにクリアされかけても、あきらめない。素早くボールをカットし、こぼれた球を思い切り右足で蹴り込む先制弾。「ケガなくコンスタントにサッカーをできるのが大きい」。人さし指を突き上げ、ピッチを駆け回った。

 03、04年とJリーグ優秀選手に輝き「ワンダーボーイ」と呼ばれた男は近年、故障に苦しんだ。09年は4月に左太ももを痛め、5月以降は腰痛で戦線を離脱。リーグ戦15試合、天皇杯1試合出場で無得点だった。日本代表での活躍を期待されたが、3月28日のW杯アジア最終予選バーレーン戦を最後に招集されていない。クラブに迷惑をかけた分、軽々しく「代表」の2文字を口にできない。「まずレッズで」と復帰への思いを胸の内に封印してきた。

 W杯イヤーを迎えた今季は違う。前半45分間で交代させられた前節の山形戦後、田中はフィンケ監督との直接対談で状態の良さと出場時間増を希望。戦術的な理由とともに、指揮官の故障防止への配慮を受け入れつつ「今年はすごくいいコンディションを保てている。選手であればもっとプレーしたいと思うもの」と、貪欲(どんよく)だ。

 「得点できるのはいいことだけれど、僕はプレーの質にこだわってやってきた」と田中は言う。この日も積極的なポジションチェンジやDFの裏へ抜け出す動きを繰り返し、味方のパスを引き出した。3月14日の東京戦(埼玉)で、視察に訪れた岡田代表監督と原強化担当技術委員長には好調なプレーを披露済み。大木コーチが目を光らせる中、残されていたゴールという「結果」を出した。

 29日は、W杯代表の当落線上にいる「国内組」にとって、事実上最後のアピールの場となるセルビア戦メンバー発表がある。ワンダーボーイは人事を尽くし、天命を待つ。【山下健二郎】