<J1:湘南2-2京都>◇第19節◇18日◇平塚

 京都の元日本代表FW柳沢敦(33)が、劇的な同点弾を決めた。敗戦濃厚の後半50分。左足ボレーで起死回生のゴールを挙げ、残留争いを繰り広げる17位湘南との裏天王山を2-2の引き分けに持ち込んだ。最下位は変わらないが連敗を6で止め、鹿島時代から師弟関係を結ぶ秋田豊新監督(40)に就任後初の勝ち点1を贈った。京都は7試合連続無得点のJワースト更新も免れた。

 柳沢は祈った。「入ってくれ」-。後半49分9秒。試合終了まで残り数秒だった。MF中山からのクロスを左足ボレーで合わすと、スローモーションのようにゴールに入っていくのを見つめた。コンマ数秒の間、ずっと祈り続けた。最後の最後に2-2の同点に追いつくと、ベンチの方に向かって両腕を突き上げた。

 柳沢

 ボールが来た時、相手を見ないで「入ってくれ」と。それだけを念じて打ちました。当たり損ないが、いいところに飛んでくれた。祈って良かった。

 秋田新監督へ贈る貴重なドローだ。連敗を6で止め、同監督就任後5戦目にして初の勝ち点をもたらした。鹿島時代からあこがれ、07年オフに10年以上在籍した古巣を離れて京都に移籍したのは、その年に現役引退を決断した師匠に誘われたからだ。

 チームが前半に放ったシュートは1本だけ。後半26分から途中出場した柳沢も、5分後の決定機をポストに阻まれた。裏天王山は決してレベルの高い一戦ではなかった。だが両チームとも必死で戦った。W杯を経験した柳沢さえ、これほど得点への執念を燃やしたのは初めてかも知れない。

 柳沢

 本当は(就任後)最初のゴールをプレゼントしたかった。次は勝ち点3を、勝利を贈りたい。

 愛弟子の熱い思いは、指揮官にも伝わった。

 秋田新監督

 これで前向きになれる。監督というものは重いもの(職業)だと。(日本代表の)岡田さんを見てそう思っていた。そういう場所に自分が立つ覚悟はあった。私はすべてを受け止める。引き分けじゃ満足できないが、みんなで勝ち取った勝ち点1です。

 現役時代より体は細くなり、頭髪もやや薄くなった。それも苦労を重ねてきた年輪か。まだ最下位。苦しい状況は変わらない。それでもJ1ワーストタイとなる6戦連続無得点からは脱出した。33歳柳沢に導かれ「秋田京都」に、かすかな光が見えた。【益子浩一】