<J1:広島1-2浦和>◇第1節◇2日◇Eスタ

 “20歳のJリーグ”が開幕し、浦和が昨季王者・広島との「仁義なき戦い」を制した。ペトロビッチ監督(55)、DF槙野智章(25)、森脇良太(26)、MF柏木陽介(25)の4人が元広島という因縁対決に、試合前からブーイングの嵐。逆風にもめげず、MF柏木、原口元気(21)の得点で勝った。1993年(平5)のJリーグ開幕以来、アウェーでの開幕戦を初めて白星で飾り、06年以来7年ぶりの優勝へ、レッズにはずみがついた。

 “仁義なき戦い”を制した。2年前までペトロビッチ監督が指揮した広島には「ミシャ(監督の愛称)チルドレン」が多数。両チームの3-4-2-1の布陣も鏡に映るようにまったく同じ。血を分けた兄弟のごとく似た両チーム。袂(たもと)を分けた元広島の3選手には、サポーターから容赦なくブーイングが浴びせられた。特に今季移籍の森脇がボールに触れるだけで罵声や怒号が飛び、前半36分にイエローカードを受けると大歓声があがった。

 殺伐とした空気が冷めやらぬ前半37分。4年前まで紫のユニホームをまとった柏木が先制点をたたき込んだ。「(逆足の)右足だったからドキドキした。フリーだったから余計」。原口からのヒールパスを受け、GK西川と1対1。ニアサイドを確実に打ち抜いた。「槙野や森脇がいるからプレッシャーが減ったのかな。あいたのは僕らの(パス)回しが良かった」。後半6分には原口が追加点をあげた。これまで2分け11敗だったアウェーでの開幕戦で初勝利。最近5年、得点さえ挙げられなかった開幕戦をものにしたのは大きい。

 試合後、ホームのゴール裏スタンド前へと出向いた槙野は「ブーイングは『頑張れ』という意味にとった。こういう因縁の対戦があってもいいんじゃないですか」。ブーイングを浴びたが、古巣のサポーターに感謝を示した。森脇は「このスタジアムはいろんな思い出がある。ただ今日は浦和レッズが勝つために来た。広島はいいチームだと思ったが考える余裕はなかった」と努めて平静を装った。

 一方、指揮官だけは少し感傷的だった。選手へ出した指示を問われると「サンフレッチェは私が作ったチーム。そう思わない人がいるかもしれないが、私はそう思う。(指示は)コメントしたくない」。06~11年まで苦楽を共にした愛弟子たちのことを思えば、喜んでばかりはいられない。感情は心の奥にしまった。

 開幕戦で勝ったのはアジア・チャンピオンズリーグ(ACL)で優勝した07年以来。期待がふくらみ、自信は深まったはずだが「成長について話すのは早すぎる。審判するのはシーズンが進んでから」と、ペトロビッチ監督は機先を制した。リーグ戦に加えてACLもある強行日程。すでに9日のホーム開幕戦へ視線は向けられた。【高橋悟史】