J2札幌に新加入したベトナム代表FWレ・コン・ビン(27)が6日、札幌ドーム内で入団記者会見を行った。契約期間は来年1月1日までで、背番号は19。出場選手登録は今週中に完了する予定だ。ベトナム人初のJリーガーは、日本代表MFでG大阪の遠藤保仁(33)とのマッチアップを熱望。代表通算51試合35ゴールの得点力で、札幌のJ1昇格を後押しする。

 「Jリーグでたくさん勉強したい」「全力で頑張りたい」…。会見で謙虚な言葉を続けたビンの目が「対戦したい選手は?」と問われ、ひときわ輝いた。「日本代表の遠藤選手です。(技術が)とてもすごい」。11年10月の日本代表とベトナム代表の親善試合でビンはスタメン出場したが、遠藤はベンチに入っただけ。ピッチでの対戦はなかった。「1回でもいいから遠藤選手と試合をしたい」と、待ち切れないかのようにビンが言った。

 体調は万全だ。ベトナムのVリーグに来日直前の7月27日まで出場。6日前の同21日には現在もVリーグトップの今季14ゴール目を挙げた。「非常に調子はいい」とビン。「練習を見てからだけど(デビューは)18日のG大阪戦じゃないかな」と、野々村芳和社長(41)は見通しを話す。来日から2週間足らずの日本デビュー戦が、遠藤との対戦になる可能性が高い。「自分の特徴を見せたい」と、ベトナムの英雄はその日を心待ちにする。

 G大阪戦を含めた8月の戦いが、昇格争いを左右することも分かっている。財前恵一監督(45)は「プレーオフ圏内に入るための大事な試合の1つ」と話す。母国の代表で35点、リーグ戦では107ゴール。背番号19が輝けば輝くだけ、昇格は近づく。「代表では9を着ていたので、同じ9が入っているし、好きです」と、顔をほころばせる。

 「来日が決まった時は心配してくれた」という歌手の妻トゥイティエンさんをベトナムに置いて単身来日。ベトナム人で最初のJリーガーとなった。自ら「自分の移籍で9000万人のベトナム人のうち4500万人が札幌(の街)を知った」というほど、影響力が大きいことも分かっている。「契約は5カ月ですが、できるだけ長くプレーしたい」。闘志を胸に秘め、ビンが静かに言った。【中島洋尚】

 ◆レ・コン・ビン

 1985年12月10日、ベトナム・ゲアン省生まれ。03年にソンラム・ゲアンでプロデビュー。04年にベトナム代表に選出され、同代表では出場51試合35得点。Vリーグは出場140試合107得点。09年にはポルトガルのレイションイスSCに期限付き移籍し、ベトナム人選手として初めて同国リーグでプレーした(出場2試合1得点)。04、06、07年ベトナム年間最優秀選手。171センチ、68キロ。