<J1:新潟3-2湘南>◇第30節◇27日◇東北電ス

 新潟FW川又堅碁(24)が、日本代表アルベルト・ザッケローニ監督(60)が視察に訪れた一戦でハットトリックを達成した。前半12分に自ら倒されて得たPKを決めて先制すると、後半18分にも再びPKで加点。同27分には右サイドからのパスを左足で押し込み3ゴール。ザッケローニ監督が直接視察した過去4戦はいずれも無得点だったが、5試合目でついに結果を出した。

 川又が3点目を強引に「奪取」した。後半27分、右サイドのMF田中亜からペナルティーエリア内にパスが出された。待ち構えていたMFレオ・シルバがシュート体勢に入る。そこに川又が割って入るように電光石火のスライディングシュート。レオ・シルバはフリーで「スルー!」と叫んでいたがおかまいなしだ。川又は「3点目を取りたかったので」とニヤリ。同僚の見せ場を奪うように決め、今季2度目のハットトリックを達成した。

 貪欲かつポジティブだ。1点目のPKは自らが倒されて獲得。そのPKは冷静にゴール左隅に流し込んだが、味方がエリア内に入るのが早かったとして無効に。それでも「昨日の練習で(PKを)3本蹴って2回外した。昨日外していたので今日は決まるかな」とプラス思考で蹴り直し、ゴール左上に豪快に決めた。

 ゴールハンターを求める日本代表のザッケローニ監督の前で強烈なアピールとなったが、本人はいたって冷静に話す。「(代表には)正直興味はない。チームとしての勝利を目標としてやっている。自分はまだそこまでのレベルじゃない。こうして注目されるのはうれしいけど、自分としてはまだその域に達していない。でも、そこまでに達したときには(代表に)呼ばれている」。

 この日の3ゴールで今季通算20得点の大台に乗せた。昨年はJ2岡山で得点ランク2位の18ゴールを挙げたが、前年J2所属の日本人選手が、翌年のJ1で20得点以上はJリーグ史上初の快挙。過去の20得点達成者がいずれも日本代表を経験していることを考えれば、川又が初の代表入りに大きく接近したことは間違いない。

 今季の得点ランクでもトップの川崎F大久保に2点差と肉薄した。「(得点王には)正直なりたい。FWとして一番上に立ちたい」。J2、J1、そして日本代表へ。川又の「シンデレラストーリー」は、始まったばかりだ。【石川秀和】

 ◆川又堅碁(かわまた・けんご)1989年(平元)10月14日、愛媛県生まれ。小松高在学中の06、07年、J2愛媛の特別指定選手に。卒業後の08年に新潟入団。10年にはブラジル・カタンドゥベンセに半年間の期限付き移籍。昨年はJ2岡山でプレーし、得点ランキング2位の18ゴール。183センチ、75キロ。