<ベルギーリーグ:リールス1-1ゲルミナル>◇19日(日本時間20日)◇リール

 ベルギー1部リールスの日本代表GK川島永嗣(28)が、心ないファンによる東日本大震災被災者を傷つけるヤジに激怒した。川島は、ホームのゲルミナル戦に4戦連続フル出場。後半に相手サポーター席のすぐ近くでプレーした際に挑発的な「フクシマ」コールを受けた。苦しんでいる被災者の気持ちを逆なでする行為への川島の抗議で、試合が7分間中断した。試合も終盤に追いつかれて引き分け。後味の悪い試合になった。

 事件は後半25分すぎに起きた。相手シュートが外れ、ボールを拾おうとした川島に、ゴール裏の相手サポーター席からペットボトルやコインが投げつけられた。怒りを抑えて、やめるように呼びかけたが、逆に許し難いコールが起きた。「フクシマ」「フクシマ」。大音量の挑発に冷静さを保てなかった。「冗談じゃないぞ!」と怒鳴り返した。

 東日本大震災と、その後の原発事故で厳しい生活を強いられている人々の気持ちを考えると、どうしても許せなかった。1度はゴールキックのためボールをセットしたが、怒りで体が動かなかった。異常を察した主審が川島に事情を聴き、両軍選手を控室に引き揚げさせ、試合は7分間、中断した。

 試合後に悔しさと悲しさが入り交じった表情で川島が語った。「他のことはオレも許せますけど、今回はユーモアじゃない。ボクらにしてみれば冗談にできることじゃない」と怒りをぶちまけた。ベルギーと日本国内の両方で被災者支援活動を続け、被災地を訪問し惨状を目に焼き付けてきただけに、心ない行為を見過ごすことができなかった。

 一方で「フクシマ」コールが起きる中、リールスのサポーターは「カワシマ」コールで、抗議する川島の背中を押した。主審も川島の言い分を理解し、すぐに試合を中断させた。「そういう部分を理解してくれたのは良かった」と、ベルギー人全員が同じではないことも理解している。地元紙ガゼット・ファン・アントウェルペンは、相手サポーターが昨季もヘントのセルビア代表GKヨルガチェビッチを「コソボ」コールで挑発して問題になったことを挙げ「スポーツ委員会の議題になるだろう」と処分の可能性を示唆した。

 試合は終盤に追いつかれ、今季初白星はお預け。「後味の悪い引き分けだった。その辺は気持ちは良くない」。川島の表情は最後まで晴れなかった。