俺には明るい未来が待っている-。日本代表のエース本田圭佑(27=CSKAモスクワ)が2日、大阪府内でスタートした代表合宿に合流した。セリエAの移籍市場は2日午後11時(日本時間3日午前6時)に締め切られるが、正式決定が秒読みだったセリエAの名門ACミラン移籍はなくなった。本田は「まあ(未来を)見てみましょう」と落胆するそぶりすら見せなかった。挫折を糧に、冬にビッグクラブの門を開く。
分厚い雨雲が、頭上を覆った。本田は、強くなる雨脚を気にすることもなく、ランニングでは先頭を走る。実戦練習でシュートを外すと喉の奥底から「ア~ッ」と、自身への怒りにも似た声を響かせた。約2時間の初練習を終えると1人輪を外れ、ぬれた芝生に座って遠くを見つめながらストレッチをこなした。室内の取材エリアに姿を見せると、移籍騒動で緊迫感を漂わせる報道陣に語りかけた。
「しゃべることはない。しゃべらんでも、記事書けるでしょ」
そして移動用バスに乗り込む直前、今後に関して問われると振り向いて、しっかりとした口調で答えた。
「まあ、見てみましょうよ」
これまでも壁にぶつかれば乗り越え、たとえ半歩でも前に進んできた。昨年1月に同じセリエAのラツィオ移籍が秒読みになりながら、移籍市場締め切りの同31日に破談になった時もそうだった。手術した右膝のリハビリのため、滞在していたバルセロナの病院の一室。当時も笑みを浮かべながら、こう話している。
「移籍が破談になったことなんて、俺にとっては屁でもないことやね。俺にはもっと、明るい未来が待っているかも知れへん。まあ見ていてくださいって、ことやね」
あれから1年7カ月-。今夏のセリエAの移籍市場は、日本時間3日午前6時に締め切られる。今度はACミラン移籍が間近に迫りながら、またしても消滅。「カカよりも本田」としていたミラン側は、CSKA側とのクラブ間交渉が決裂すると、土壇場になってRマドリードのブラジル代表MFカカを獲得した。それでも本田は落胆することなく「まあ、見てみましょうよ」と、次に訪れる希望へと目を向けた。
公言する「W杯優勝」という目標もある。日本は6月のコンフェデ杯から結果が出ていない。8月14日のウルグアイ戦も2-4の完敗。アジアに勝てても、強豪国には勝てない現状が続く。6日グアテマラ戦、10日ガーナ戦は親善試合とはいえ、復調への重要な場になる。本田自身にとっては代表はもちろん、CSKAで残り4カ月活躍すれば、契約切れで移籍金なしになる今冬にさらなるビッグクラブから声がかかる可能性も高くなる。憧れ続けたRマドリード入りでさえ、空想ではなくなるだろう。
明るい未来へ-。本田は夢へ続く道を、これからも歩んでいく。【益子浩一】
◆本田の今後
今夏の移籍市場が閉まり、本田はCSKAモスクワで、冬の移籍市場が開く来年1月1日までの4カ月間、再び世界へ向けて実力をアピールすることになる。現在首位を走るロシア1部リーグでは、トップ下でチームに不可欠な存在となっている。また、17日から始まる欧州CL1次リーグは、昨季王者Bミュンヘン、プレミアの強豪マンチェスターCなどと同組で、本田にとっては、またとないアピールの場だ。リーグ戦、欧州CLで結果を出せば、カカを押しのけてACミランでトップ下の定位置確保を可能にし、それ以外のビッグクラブからオファーが舞い込む可能性も出てくる。<本田を巡るミランとCSKAの移籍交渉>
◆7月5日
日本で自主トレ中、本田は「(ACミランが移籍先の)候補であるのは確か。(代理人に)動いてもらっている」とし、夏の移籍を目指していることを語る。
◆8月8日
日本代表合宿に向け都内で自主トレ。CSKA側が要求する移籍金500万ユーロ(約6億5000万円)をミラン側が用意したことを明かし、本田は「(移籍決定へ)大詰めを迎えている。近いうちに白黒ハッキリする」と決定間近を示唆。
◆同15日
CSKAギネル会長が「1000万ユーロでも売らない」と翻意。本田は「今は待つしかない」と、交渉は綱引き状態に。
◆同30日
ミランがガーナ代表MFボアテングをシャルケに売却、1200万ユーロ(約15億6000万円)の移籍金を得た。ガリアーニ副会長は「すぐに(本田を)獲得できるよう、CSKAと話し合っている」も進展せず。イタリア報道は、CSKAから「本田を(今冬の)契約満了までクラブに残す」との最終回答が届いたと報じた。

