2020年東京五輪に向けて国がスポーツ界への支援を広げる中、国費を使ってアジア大会に派遣された競泳の日本代表選手が試合会場でカメラを盗むという前代未聞の不祥事を起こした。選手を選んだ日本水泳連盟や、選手団派遣の主体となる日本オリンピック委員会(JOC)は厳しく責任を問われそうだ。

 日本選手団の青木剛団長は、JOCや日本水連が選手に行動規範の順守を求め、倫理教育を行ってきたと釈明したが、事件を防げなかった。文部科学省幹部は「極めて幼稚な話。今後はJOCや競技団体で人間教育を充実させる必要があるのではないか」と指摘した。

 近年はJOC加盟競技団体で補助金の不正受給や暴力問題が相次ぎ、ただでさえ「JOCのガバナンス(統治)は機能していない」(スポーツ議員連盟幹部)との批判がある。再発防止を誓い、ことしに入って東京五輪までの6年間で1000億円以上の強化費を国に求める要望書を提出したJOCにとっては、最悪のタイミングで起きた不祥事といえる。

 1984年ロサンゼルス五輪で水泳日本代表選手の大麻使用事件が起きた際は、当時の水連会長や五輪代表監督が引責辞任した。あるJOC理事は、今回も関係者の責任問題で「ある程度の処分は避けられないのでは」と予想した。