日本陸連は11日、世界選手権(8月、北京)マラソン代表として計6人を発表した。女子は名古屋ウィメンズ3位の前田彩里(23=ダイハツ)ら3人を選び、選考レースの昨年11月の横浜国際で優勝した田中智美(27)を選ばなかった。レース展開などを考慮し、大阪国際3位の重友梨佐(27)が選出されたことに田中の所属先・第一生命の山下佐知子監督(50)は「びっくりした」と驚きの声を上げた。今回の世界選手権は、16年リオデジャネイロ五輪へとつながる舞台。今後の選考方法に改善を求めた。

 勝って選ばれなかった。午後1時30分から東京・新宿区内のホテルで行われた日本陸連の代表発表の結果を聞いた山下監督は、意外な結果に耳を疑った。

 「びっくりしたというのが率直な感想です。田中は当落線上にいるとは思っていました。ただ重友選手の選考レースの評価でみると、どう考えても田中だと。記録も18秒しか変わらない。最後まで勝負にかけてなんとか優勝したことをどう取ったのでしょうか」

 昨年11月の横浜国際。中盤以降先頭集団でレースを進めた田中は、冷静に勝負を見極めた。40キロ過ぎからフィレス(ケニア)との一騎打ちとなると、ラストの50メートルで抜き返す底力を見せた。ただ、この日の日本陸連の会見では、レース序盤で先頭集団を追わなかった走りが重友と比べて消極的だったことが落選理由に挙げられた。

 「それなら最初から言うべきです。後出しじゃんけんに感じてしまいます。いまは(日本陸連として)ペースメーカーの設定タイムや(ペースメーカーを)配置するかしないかも決まっていない。気象条件などはありますが、同じ条件で競わせるべきでしょう。タイムを出せばいいのなら、レース展開も変わります」

 横浜国際は他選考レースに比べて、外国勢のレベルの低さも指摘された。

 「そうは思いません。ロンドン五輪金メダルのゲラナ選手(エチオピア)も出ていました。他レースに比べて弱い選手が出ていたとは思えない」

 世界選手権で8位入賞すれば、16年リオ五輪代表に内定する。発表後には直接日本陸連側から説明は受けた。ただ、それだけ大事な選考だからこそ、公明正大な判断を望む。

 「当事者という立場ですが、五輪に直結する大会ですので、あえて声を上げました。もちろん誰もが認める強い選手を育てることが指導者の使命であることはわかっています。ただ、このような選考をするのであれば、今後はレースを一本化することまで考えないといけないと思います。ペースを決め、そこから振り落とされた選手は代表をあきらめる、そんなレースですね。今回の選考は、今後の日本女子マラソン界にとって、いろいろな問題をはらんでいると思います」