地元和歌山の和戸(わど)達哉(25=和歌山県教育庁)が、涙の初優勝を飾った。

 追い風1・4メートルの決勝で好スタート。後半に能登谷雄太(26=ニューモード)の追い上げを受けたが、必死で粘り最後は横一線でゴール。わずか0秒01差の13秒75で先着して、優勝した。

 「最後は食われたかなと思った。あー、2位かなと。最高にうれしかった」。電光掲示で勝利を確認するとグラウンドにひざまずいて男泣きした。

 岐阜県出身の和戸は、中京大卒業時に恩師の薦めもあって、3年後に国体開催を控えていた和歌山県教育庁に入った。普段は体育指導員として、子供たちに運動を教えながら競技を続けてきた。「1人で練習することもあって、大学時代まで人に頼っていたことがよくわかった。イチから自分で考えるようになった」という。「3年間お世話になった和歌山に恩返ししようと思って、思い切って走った」。レース後、地元関係者と抱き合うたびに涙で顔をくしゃくしゃにした。

 この日はいつも体育を教えている子どもたちも観戦に訪れていた。「小学校5年生の男の子が『ハードル、始めます』といってくれたんです。せっかく見に来ているのにハードルでこけたり、後半に失速するんじゃなくて、いい姿をみせられてよかった。いつもゴールして(結果が出なくて)首をかしげる僕ですけど、何が何でも優勝したいと思っていた」とまた泣いた。

 活躍が期待された地元開催の国体で、見事に初優勝を飾った。陸上競技の和歌山チームでは、今大会最初の優勝者にもなった。