陸上のダイヤモンドリーグ第4戦のプレフォンテイン・クラシックが27、28日の2日間、米国オレゴン州ユージーンで開催される。男子100メートルに打倒ボルト候補の一番であるジャスティン・ガトリン(33=米国)が、女子200メートルには七種競技から転向してきたダフネ・シュキッパーズ(23=オランダ)が出場する。また“長距離以外のケニア選手”として注目の男子400メートル障害のニコラス・ベット(26)、やり投げのジュリアス・イエゴ(27)もエントリーしている。

 昨夏の北京世界陸上のサプライズに、ケニアが中・長距離種目以外で金メダルを2個取ったことが挙げられた。

 400メートル障害のベットは前年まで49秒台だった自己記録を、8月1日にケニア国内の試合で48秒29と縮めたが、短距離種目の記録が出やすい高地だったため評価は低かった。それが3週間後の北京でも48秒台中盤を予選、準決勝と連発。初めて47秒台を出した決勝で金メダルを獲得してしまった。

 イエゴはロンドン五輪で12位になったときに、ユーチューブを見てやり投げ技術を独学したことが話題となった。その後は専門コーチの指導も受け、昨シーズンは自己記録を7メートルも伸ばして世界陸上にも優勝した。

 今大会のベットは47秒台が、イエゴは90メートル台が期待される。

 男子400m障害もやり投げも日本が過去の世界陸上でメダルを獲得し、世界で戦えると位置づけてきた種目。そこにケニアなど、これまでメダルなど考えられなかった国から選手が現れた。世界記録は伸びていなくても、入賞レベルの選手層が厚くなっている種目が増えている。日本選手が健闘と評価できる記録を残しても入賞数が減っているのは、そういった背景があるからだ。

 男子400メートルにはロンドン五輪金メダリストのキラニ・ジェームズ(23=グレナダ)が出場する。西アフリカ系の黒人選手という点では米国やジャマイカと同じだが、人口10万人の小国から短距離種目の金メダリストが誕生したことが驚きだった。今大会では13年モスクワ世界陸上金メダリストのラショーン・メリット(29=米国)と激突する。

 また、男子100メートルには昨年の今大会で9秒99と、東アジア圏の選手として初めて9秒台を出した蘇炳添(23=中国)がエントリー。ガトリンら黒人スプリンターたちの壁はまだ厚いが、さらなるタイム短縮を狙う。

 見方を変えれば日本選手も、不得手の種目で台頭する潮流に乗ればいいだけのこと。その期待がかけられている1人が、今大会男子1万メートルに出場する大迫傑(25=ナイキオレゴンプロジェクト)である。

 トラック長距離種目の五輪&世界陸上での入賞は、2000年シドニー五輪1万メートル7位の高岡寿成(現カネボウ監督)が最後。ケニア、エチオピア以外にもウガンダやエリトリアなどの周辺国からも有力選手が現れ、アフリカ選手以外の入賞は難しくなっている。

 そのアフリカ勢支配に立ち向かっているのがナイキオレゴンプロジェクトで、白人ランナーのガレン・ラップ(30=米国)がロンドン五輪1万メートルで銀メダルを取って話題になった。

 大迫も同じように、トラック長距離でも世界と戦うために早大卒業後にナイキオレゴンプロジェクトに加入し、スピード重視のトレーニングを積んでいる。昨年の今大会では前半5000メートルを13分41秒とハイペースで飛ばし、後半も持ちこたえて27分45秒24をマークした。今年は27分29秒69の日本記録更新の可能性もある。

 ◆ダイヤモンドリーグはIAAF(国際陸上競技連盟)が主催する最高カテゴリーの競技会シリーズ。今季はドーハ大会を皮切りに9月のブリュッセル大会まで全14戦が開催される。各大会の種目別優勝賞金は1万ドル(2位6000ドル~8位1000ドル)。各種目は年間7大会で実施され、各大会のポイント(1位10点~6位1点)合計で争われる年間優勝者には4万ドルとダイヤモンド入りトロフィーが贈呈される。出場者はトップ選手に厳選され、ほとんどの種目が予選なしの一発決勝。緊張感あるレースが次々に行われる。また、オリンピックや世界陸上のように1国3人という出場人数の制限がない。ジャマイカ、アメリカ勢が揃う短距離種目や、アフリカ勢が多数出場する中・長距離種目などは、オリンピックや世界陸上よりも激しい戦いになる。