<福岡国際マラソン>◇2日◇平和台陸上競技場発着(42・195キロ)

 「実業団の星」堀端宏行(26=旭化成)が、2大会連続の世界選手権出場を確実にした。来年のモスクワ世界選手権代表選考レースの第1弾で、2時間8分24秒の2位でゴール。社長ランナーの藤原新(31)や、公務員ランナーの川内優輝(25)を振り切って、名門のエースが日本人トップ。日本陸連の設定する代表決定タイムにこそ25秒及ばなかったが、ほぼ手中に収めた。広島・世羅高出身の一般参加ジョセフ・ギタウ(24=ケニア、JFEスチール)が初優勝した。

 堀端が大きなストライドで玄界灘の風を切った。36・5キロ、藤原ら4人の第2集団から189センチが抜け出した。口は全開、首は右に傾く。苦痛の表情のまま残り5キロを1人旅。日本人トップで平和台のテープを切った男には意地があった。

 堀端

 藤原さんは余裕を持って走ってて、さすがだなと。川内くんは同学年だし意識しちゃいますね。こっちは話にならん走りじゃ、何やってんだと言われるチーム。負ければ悔しかったでしょうね。

 注目は社長でプロの藤原と、公務員の川内だった。一方で堀端の胸には、日本マラソン界を引っ張ってきた「旭化成」の文字がある。「異色のランナーが扱われる。陰に隠れて結果を出せばいいと思っていた」。代表即決定には25秒届かなかったが、自己ベストを更新して、5枠の1つをキープした。

 仕切り直しだった。3月のびわ湖毎日で失速し、本命だったロンドン五輪は補欠。4月に右アキレスけんを痛め、秋まで本格的に走られなかった。「でも駅伝に向けて質の高い練習ができましたから」。伝統の豊富な練習量でスタミナを培い、実業団ならではの駅伝メニューで速さを磨いた。名門のエースが復活した。

 旭化成監督で、日本陸連の宗猛男子中長距離・マラソン部長は「体も走りもデカイ。無駄な走りをしなければ日本記録を出せる素材」と目を細める。師匠は「タイムを意識して力まないように」と時計をつけさせず、快走を引き出した。かつて“うどの大木”とも言われた大型ランナーは「自信を取り戻せました」とキッパリ。リオ五輪へ向かって、日本に大きな柱ができあがった。【近間康隆】

 ◆堀端宏行

 ほりばた・ひろゆき。1986年(昭61)10月28日、熊本県八代市生まれ。日奈久中時代はサッカー部で、八代東高から陸上に専念。05年に旭化成入社。昨年の世界選手権は日本勢最高の7位入賞。家族は両親と弟2人、妹。189センチ、68キロ。