女子テニスで世界ランキング71位の杉山愛(34=フリー)が、今季限りで引退することを決めた。9日、所属事務所が発表した。27日開幕の東レ・パンパシフィック(東京・有明コロシアム)が現役最後の試合になる。今季は8大会連続初戦敗退など低迷し、開催中の全米オープンでもシングルス1回戦敗退。世界ランクでも69位の森田あゆみ(19)に抜かれ、日本人トップの座を明け渡していた。世界最多の4大大会シングルス連続62回出場、日本人初の単複同時トップ10入り、混合を含むダブルス4大大会4度優勝と、数々の金字塔を打ち立てた日本の第一人者が、プロ転向17年目についにラケットを置く。

 163センチ、55キロの小さな体と、それを支え続けたタフな心がついに燃え尽きた。5歳でテニスを始め、92年にプロに転向してから17年。今年は8大会連続初戦負けなどで、最高8位だった世界ランクも70位以下に落ちた。「70位、80位にまでなって続けることはない」。杉山は、言葉どおりにラケットを置く。

 1年間を通して、どれだけできるかが信条だった。「まだ数試合だけならトップ20との選手とも対等にできる。それが年間を通じて続かないと感じた。完全燃焼なんだと思う」。今年の夏もロサンゼルスで激しいトレーニングを積んだが、これを年間通して続けなければトップを維持できない。それは無理だった。

 ここ数年は、その1年を最後の年だと思いプレーしてきた。昨年の全豪で1度は引退に気持ちが傾きかけた。しかし、自分を超える若手の後継者が現れず、北京五輪という目標もあり、踏みとどまった。その北京五輪でホープの森田あゆみとダブルスを組み女王学を伝授。その森田が今年、世界ランクで自分を抜いた。「いつかは、あゆみちゃんは私を超えていく日が来る」。その日が現実となり、心残りはなくなった。

 9年間続いた母芙沙子さんとの選手とコーチの関係も、6月に解消した。芙沙子さんは「引退の時は指導者ではなく母でいたい」と話していた。4月の国別対抗戦フェド杯ポーランド戦では、村上武資代表監督に「今年が最後になると思う」と伝えていた。引退への準備は整えていた。

 東レパンパシフィックが現役最後の舞台となる。会場の有明は、97年のジャパンオープンでツアー初優勝を飾った思い出の場所。「引退の時は必ず日本のファンの前できちんと報告がしたい」。そう話していた杉山は約束通り、日本を最後の舞台に選んだ。

 今後は自分のテニスアカデミーを中心に若手を育て、社会貢献活動にも意欲を見せる。世界最多の4大大会62回連続出場はもちろん、ツアー・シングルス492勝、ダブルス563勝の日本最多記録も、今後は当分破られないだろう。「長いプロテニス生活の中でかけがえのない経験をさせてもらいました」。ツアー1767試合を戦い抜き、残る1大会で杉山はすべてを出し尽くす。【吉松忠弘】