<フィギュアスケート:世界選手権>◇5日目◇27日◇イタリア・トリノ、パラベラ競技場◇女子フリー

 【トリノ=広重竜太郎】世界女王に返り咲いた浅田真央(19=中京大)が新コーチとともに再出発する。ショートプログラム(SP)2位から臨んだフリーで129・50点をマーク。フリー1位はバンクーバー五輪金メダルの金妍児(韓国)に譲ったが、同五輪銀メダルの雪辱を果たして、2年ぶりに日本選手初の2度目の優勝を果たした。記者会見では「技術面をしっかり見てくれる先生を探している」と話し、新コーチのもとで14年ソチ五輪金を目指す意欲を示した。

 世界女王の座を取り戻しても、浅田の瞳はすぐに未来へ向いていた。場内での優勝インタビューでは「グラッツェ(ありがとう)」とイタリア語で答えるなど喜びに浸った。だが記者会見で来季の態勢について聞かれ、さらなるステップアップを宣言した。

 浅田

 ジャンプの種類を増やせると思うし、やらなきゃいけない要素もたくさんある。まだ来季のことは決めていないが、技術面をしっかり見てくれる先生を探している。

 最近2シーズン、ロシア人のタラソワ・コーチの指導を受けた。だが同コーチはロシア代表の強化責任者を兼任。直接指導は年間の4分の1に満たず、今大会も現地入りしなかった。浅田は一時期、挑戦していた3回転フリップ-3回転トーループの連続ジャンプを「来季はやってみたい」と発言。そのために常時、指導を受けられる態勢が必要だ。

 今大会は強靱(きょうじん)な意志で優勝をつかみ取った。五輪後、心は折れかけ、体重も2キロ増。だが「SPとフリー両方完ぺきに滑りたい」と思い直し、臨んだ。五輪フリーではスタミナが尽き、後半のジャンプでミスを連発。「今日は後半は絶対に決めよう」と挑み、2つ目の3回転半ジャンプの回転不足以外は華麗にフリー曲「鐘」を演じきった。

 引退の可能性もあるライバル金にも10度目の直接対決で5大会ぶりに勝ち、4勝6敗とした。「ジュニアのころからヨナとやってきて、自分も頑張ろうと思い、だからずっと成長できた」と存在の大きさを認めた。

 浅田陣営は今後、タラソワ・コーチとはアドバイザーとしての関係を継続しつつ、日本人コーチを中心に後任を探す意向だ。浅田は今回の優勝を「五輪での悔しさはこの試合で晴らすことはできない」と位置付けた。五輪金メダルという最終目標だけを、浅田は見据えている。