<フィギュアスケート:グランプリシリーズ第3戦:中国杯>◇3日◇上海

 浅田真央(22=中京大)が逆転優勝を飾った。ショートプログラム(SP)2位からフリー1位の118・87点で総合181・76点。SP首位で総合177・92点だった14歳ユリア・リプニツカヤ(ロシア)をかわした。回転不足などミスもあったが、男女を通じて日本人最多のGP通算9勝目を挙げ、14年ソチ五輪の会場で行われるGPファイナル(12月6日開幕)出場が見えてきた。

 最高の演技ではなかった。でも、約1年ぶりの表彰台の頂点が素直にうれしかった。

 浅田

 終わったときはまだまだレベルアップしなきゃと思ったんですけど、よく考えたら久しぶりの優勝。うれしいです。次につながるかな。

 優勝は昨年12月の全日本選手権以来。05年、シニア大会デビューを飾った中国で、再起へ向けた大きな1歩を踏み出せた。

 「白鳥の湖」に乗って舞った。2つ目の連続ジャンプで3回転トーループが2回転の判定、続く3回転フリップも回転不足など、完璧には程遠かった。しかし、演技後には笑顔で日中のファンに感謝した。

 6月、フリーがバレエ曲のため、名ダンサーで指導者のゾルタン氏がいるハンガリーに渡った。感激したのは同国で栽培される有機野菜。欧州でも大人気で、姉の舞と舌鼓を打った。

 その姿は少し前には想像できなかった。トマトを筆頭に、野菜嫌い。好き嫌いも激しかった。変化が起きたのはここ1、2年。苦手だった納豆なども口にするようにした。9月には、今夏に山梨の農園で自ら種をまいた有機野菜が収穫されて届き、姉の手料理をたらふく平らげた。3回転半ジャンプと客観的に向き合えるようになった精神面に加え、食事への意識にも競技者としての成長があった。

 過去7季出場しているGPでは、1大会で優勝すれば5季すべてGPファイナルに進出してきた。14年ソチ五輪を占う意味でも経験しておきたい本番会場での12月のファイナルに、大きく前進した。

 試合後の会見場、隣には14歳の2位リプニツカヤがいた。シニアGPデビュー戦が中国杯、そこで2位という成績も、05年の自分と同じだ。

 浅田

 ユリアちゃんに言える立場ではないですけど、本当にレベルの高い選手。自分ももっとレベルアップしないとと感じました。

 昔の自分を懐かしむように、優しくほほ笑んだ。【阿部健吾】