<大相撲夏場所>◇7日目◇15日◇両国国技館

 横綱白鵬(25=宮城野)が綱の力を見せつけた。立ち合いで西前頭2枚目栃ノ心(22)に右へ動かれたが冷静に対応。得意の右四つにしてから腰を下ろして寄り切り、4大関を撃破してきた怪力の挑戦をはね返した。新入幕以降では、最も夏場所の勝率が高い「夏男」。横綱の風格も十分に、2場所連続14度目の優勝へ死角はない。平幕霜鳳(32)が敗れて、全勝は新大関把瑠都(25)と2人だけ。早くも、先場所も優勝を争った両者の一騎打ちムードになった。

 「白鵬師匠」はムッとした。相手は場所前にけいこをつけた栃ノ心。力自慢の“弟子”が選んだのは、まさかの変化だった。「調子いいだけに真っ向できてほしかった。オレはああいうけいこを教えてないよ」。土俵中央で離れると、大きく息を吐いてから突進。得意の左上手をつかむと、館内は「勝負は決まった」とばかりにため息に包まれた。最後は盤石のがぶり寄りで、4大関撃破の難敵を退けた。

 全勝キープで、初場所14日目からの連勝を「24」に伸ばした。これで入幕後の夏場所は82勝15敗。勝率8割4分5厘は春場所(8割4分4厘)を抜き、最も成績がいい場所になった。「5月は初めて優勝したし、綱とりも成功させた。気候も過ごしやすいからね」。角界の「夏男」は、執行トレーナーが「今場所はまったく不安がないです」と言うほど体調もバッチリだ。

 初優勝は06年夏場所だった。この4年の成長ぶりに「歴史の証人」も驚く。初日前日8日の優勝額贈呈式。通算13枚目の肖像画を描いた彩色家の佐藤寿々江さん(82)は「最初のころと胸の張り方、風格が全然違う。異常に落ち着いている」と目を細めた。佐藤さんは60年近く優勝額を制作。ポイントは「調子がよく分かるからボディー」という。歴代の大横綱を手がけてきただけに「千代の富士や貴乃花も最初は筋肉が全然なくて余白が多かった。白鵬は東京場所で優勝から遠ざかっているけど、今回は違うと思う」と太鼓判を押した。

 通常は取組前に1度だけ行くトイレに、この日は3度も駆け込んだ。負けられない重圧と闘いながら、土俵では堂々とした姿を見せ続ける。今場所優勝すれば、元横綱の輪島大士さん(62)と並ぶ14度目。その優勝額を贈る約束をしている輪島さんと、打ち出し後は食事をともにした。「何かが動いてますね。リズムに乗ってるんじゃないかな」。強き横綱に、やはり死角はなさそうだ。【近間康隆】