日本相撲協会は２７日、東京・両国国技館で理事会を開き、過去の名古屋場所で暴力団関係者に入場券を手配したとされる木瀬（きせ）親方（４０＝元幕内肥後ノ海）を委員から年寄への２階級降格、清見潟（きよみがた）親方（６４＝元幕内大竜川）をけん責処分とすることを決めた。また木瀬部屋は所属する出羽海一門の「預かり」とし、事実上の部屋消滅とする異例の厳罰を下した。部屋の力士たちは今後、移籍先を探すことになる。

　暴力団との関係を徹底的に断絶したい日本相撲協会は、理事会で異例の重い処分を科した。木瀬部屋が「一門預かり」とされた。事実上の閉鎖で、村山弘義・外部理事は「木瀬親方は（部屋持ち）親方として適格性に欠けるので、部屋を一門預かりになった」と指摘した。

　来場所で新入幕が期待される臥牙丸ら所属する力士２７人の移籍先は、出羽海一門の話し合いで決まる。木瀬親方は「若い衆がいますから、相撲をとれる環境だけはつくってあげたい」と話した。処分を受けた後は部屋に戻り、力士たちを招集して状況を説明した。

　武蔵川理事長（元横綱三重ノ海）は「まずは、本人たちが話し合ってくるだろう。弟子の希望も聞いて」とし、個別に異なる部屋への移籍については「それはやってはいけない」とした。木瀬親方は部屋付き親方となるため、移籍先の多大な理解が必要になる。

　相撲部屋が「一門預かり」とされるのは、極めて異例。似たケースとして、８５年の花籠部屋の事例がある。この時は花籠親方（元横綱輪島）が年寄名跡を借金の担保に入れたことが発覚して廃業に追い込まれ、力士ら全員が同じ二所ノ関一門の放駒部屋へ移籍した。

　また理事会では、過去の名古屋場所で、知人から土俵下の特別席「維持員席」の入場券を手配した木瀬親方を、委員から年寄へ２階級降格とした。除名、解雇に次ぐ重い処分で、自動的に減給となる。仲介を依頼された清見潟親方には、けん責処分が下された。両親方は、券が暴力団関係者に渡るとは知らなかったと弁明したが、会見した陸奥広報部長（元大関霧島）は「知らなかったでは済まされないと判断された」と説明した。外部理事からは「解雇」を求める声も上がったという。

　八角広報副部長（元横綱北勝海）らは、文科省に状況を報告し、維持員の仕組みの見直しなどを指示された。ある理事は「力士の気持ちを思うといたたまれない」と嘆く。一連の不祥事はついに、無関係の若手力士の将来にまで影響を及ぼしてしまった。