<大相撲名古屋場所>◇5日目◇14日◇愛知県体育館

 大関魁皇(38=友綱)が単独史上1位の通算1046勝を挙げた。東前頭2枚目の旭天鵬(36)を寄り切って2勝目(3敗)、前日に並んだ千代の富士の通算最多勝を抜き去った。ただ黒星が先行しているため、満足感は示さず、本場所に集中する姿勢を強調。このままなら、昭和以降で最年長となる40歳大関の誕生も見えてきた。

 自分の型にはまったら、負けない。魁皇は得意の左四つから、グッと旭天鵬を寄り切った。東の花道で地元クラブのママから、帰路の駐車場で報道陣から、記念の花束は受け取った。だが、相撲中継のインタビューは断った。通算最多勝は達成しても、5日目を終えた時点では喜べなかった。

 魁皇

 数字のことを言われても、序盤が終わっただけ。黒星先行になっているのに、喜んでいられない。自分の中では、場所に集中したいと思っている。

 2勝3敗。大関としてのプライドが、祝福ムードを断ち切った。大記録に到達しても、燃え尽きないことの証明でもある。友綱親方(元関脇魁輝)も「これでいいという風には、ならないからね」と気持ちを察した。この日の取組後も、4日連続で奈良の井上整骨院を訪れ、座骨神経痛の治療を受けた。車で片道2時間かかり、前夜は午後11時近くまでマッサージを受けた。もはや、執念で体調を整えている。

 柔道整復師の井上哲氏(37)は言う。「場所中は、ずっと来ることになると思う。感覚は戻ってきているので、今日、明日くらいをしのげば、来週から良くなる可能性がある。体調さえ整えば、2年とは言わないが、あと1年はいけると思う」。8年間、状態をみてきた経験をもとに、まだやれる見通しを示した。

 千秋楽の24日、魁皇は39歳になる。昭和以降、大関を務めた最年長力士は、大ノ里の39歳9カ月。魁皇は来年5月の夏場所で、これに並ぶ。名古屋場所まで持ちこたえれば、「不惑の大関」として大相撲史に名を残す。通算最多勝の先にも、心の励みになるような記録は、まだ残されている。

 場所が進むごとに、調子は戻っている。「ここ何日か、魁聖と稽古して、稽古場と同じ感じで相撲が取れた」と手応えを口にする。相撲に集中する姿勢は、30代にして、既に惑わず。前人未到の領域に入った大関は、もう誰とも比べようがない。【佐々木一郎】