阪神は完敗となったが、1、2番コンビがいい働きをしていた。特に中野に関しては後半戦開幕から7番で使っていたが、糸原が先発復帰しても2番で継続起用するべきだ。いい打者の条件である思い切りの良さを備えているし、リーグトップの20盗塁を記録している走力はやはり魅力だ。

打線のつながりという点では、粘りのある糸原を2番に置くのは捨てがたい。しかし中野を7番に配置すれば、彼の足が生かせず、得点力が半減してしまう。例えば2死一塁で盗塁に成功しても8番打者が歩かされて投手との勝負になりがちだ。2番に置いたほうが、相手にかけるプレッシャーが違う。無死一塁や1死一塁の状況で打ってもいいし、バントしてもいい。併殺崩れやバント失敗でも走者として一塁に残り、盗塁で得点圏に進める可能性がある。攻撃の幅が広がる。

さらに言えば、クリーンアップにもいい影響を与えることがある。打者というのは、主軸であっても、ゲッツーを打つのが嫌だという気持ちが頭の片隅にあるはず。中野が二塁に進むことで、打ちやすくなる。クイックの速い投手の場合は、走ると見せかけて、実際には走らなければいい。投手にプレッシャーをかけることで、コントロールミスを誘いやすい。中野の足というのは、いろんな意味で生きてくる。3回の場面は、サンズが盗塁を嫌がったように見受けられたが、盗塁は必要な作戦だ。クリーンアップは割り切って、受け入れなければならない。

もっとも、この日のサンズと大山はいただけなかった。3回に2点をもぎ取り、大きなチャンスで回ってきたが、ストレート系の甘い球を簡単に見逃して三振。あれで試合の流れが決まってしまった。まだ空振り三振なら、「さあ、あと3点」という気になるが、見逃し三振で機運はしぼんでしまった。

選球眼のいいマルテが1軍に復帰すれば、近本、中野の後に座り、4番大山、5番佐藤輝、6番サンズという並びになってくるだろう。今後、優勝争いでシビアな戦いになる巨人、ヤクルトとの上位対決では、相手もよりプレッシャーがかかる。そこを考慮しても、走れる中野を2番で起用するのは一手だ。(日刊スポーツ評論家)

阪神対DeNA 3回裏阪神無死一、三塁、打者サンズの時、二盗を決める中野(撮影・清水貴仁)
阪神対DeNA 3回裏阪神無死一、三塁、打者サンズの時、二盗を決める中野(撮影・清水貴仁)