数字上は苦しくなっているが、現在の状況で首位のヤクルトを逆転できる可能性を持っているチームは、阪神しか残っていない。この1週間の6試合で阪神が連勝を続ければ、まだ逆転の可能性をつなぎ留められると思っている。もう諦めているファンもいるかもしれないが、少なくともプレーする選手は、最後まで諦めないで戦う義務がある。そんな気持ちでスタメン表を見てビックリした。

7日に左脇腹に受けた死球の影響で背中の張りを訴えた大山が、スタメンを外れた。最初にスタメンオーダーを見たときは理由が分からず「背中の張りぐらいなら試合に出てほしかった」というのが正直な感想だった。というのも前日の月曜日は休養日。私が古い人間なのかもしれないが、休養日にはコンディションを整える時間を作れる。その翌日に主力選手が大事を取って休むというのは、ひと昔前には考えられなかった。

それでも当たり所によって無理をすれば、1プレーで長期離脱の可能性もある場所。試合前の練習には参加していたと聞いたが、欠場は仕方ないかもしれない。しかし、大山離脱の影響は、打てなくて苦しい阪神打線をさらに苦しくさせた。1、2番を崩したくないのだろう。4番にはマルテを据え、3番に小野寺を起用した。明らかに荷が重く、5回無死二、三塁からは遊ゴロで走者がかえれず。マルテは申告敬遠で糸原は捕邪飛。結局、無得点に終わった。

試合は先発した青柳が踏ん張った。7回2死一塁から大山の代わりに三塁でスタメン出場した佐藤輝がなんでもないゴロをファンブル。打席に坂本を迎えたが、内角のツーシームで遊ゴロに打ち取って無失点。8回2死満塁からは守護神のスアレスが登板。イニングまたぎで9回も抑え、1点差をしのぎきった。この投手陣の奮闘を見て、何も感じない野手はいないだろう。

ピンチをチャンスに変えてほしい。大山にはこの後のCSが控えているため、無理はさせたくない気持ちもあるだろう。しかし無理が利くコンディションになれば、出場してほしい。それが主力選手の扱い方であり、選手の教育にもつながる。ヤクルトは負け、マジックは減らないまま、また明日も試合がある。最後まで諦めない意地を見せてほしい。そういう試合を続けてチームも選手も強くなるのだと思う。(日刊スポーツ評論家)

巨人対阪神 スタメン(撮影・加藤哉)
巨人対阪神 スタメン(撮影・加藤哉)