阪神が6連勝を飾り、ヤクルトと並んで交流戦首位に立った。「日本生命セ・パ交流戦」のソフトバンク戦は6回、大山悠輔内野手(27)が決勝の2点適時二塁打。日刊スポーツ評論家の岩田稔氏(38)は0-0の2死二、三塁で絶好調大山にストライクが投げられた場面に驚き、「今の大山は簡単に勝負していい打者ではない」と指摘した。【聞き手=佐井陽介】

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まさか2球連続ストライクボールで勝負されるとは驚きました。0-0で迎えた6回表2死二、三塁。絶好調の阪神大山選手が打席に入った場面です。その直前、ソフトバンク側は1度マウンドに集まっています。一塁が空いていたので当然、「歩かせOK。慎重に」という話は出ていたはずです。にもかかわらず、2球連続で甘く入った結果の2点二塁打。バッテリーは悔やんでも悔やみきれないのではないでしょうか。

投手はいつだって逃げたくない生き物です。石川投手が勝負したくなった気持ちを否定するつもりはありません。ただ、あのシーンは慎重に行きすぎても損はない場面でした。実際、経験豊富な甲斐捕手は1球目、内角ボールゾーンに直球を要求しています。これがど真ん中に行ってしまって、より慎重にならなければならない2球目。今度はカーブが甘く浮いたのですから、痛恨としか言いようがない1球でした。

一方の大山選手は初球から変化球を狙っていたように見えました。石川投手のカーブが浮き始めていることに気づいていたのでしょう。ど真ん中の直球を割り切ってスルーした後、狙い澄ましていたカーブを1球で仕留めた内容には、状態の良さを感じずにはいられません。今の大山選手は、勝敗の分かれ目で簡単に勝負を選択していい打者ではない、と表現しても大げさではないと思います。

阪神投手陣に目を向ければ、西勇輝投手は熟練の内容でした。この日は際どいコース、高さをなかなかストライクとコールしてもらえませんでしたが、それでも要所で粘れるからさすがです。何より2点リードをもらった直後の6回裏、少し足を気にするそぶりを見せながらも、無失点でしのいだマウンドさばきに価値があります。

今季初めて西勇輝投手とバッテリーを組んだ梅野捕手にも攻守で気迫を感じました。負傷離脱している間にチームが急浮上。1軍復帰戦となった一戦で「俺もいるぞ」という感情が全身からあふれ出ていました。役者がそろっての6連勝。阪神の勢いは本物だと感じます。(日刊スポーツ評論家)

ソフトバンク対阪神 6回表阪神2死二、三塁、左中間へ2点適時二塁打を放つ大山(撮影・加藤哉)
ソフトバンク対阪神 6回表阪神2死二、三塁、左中間へ2点適時二塁打を放つ大山(撮影・加藤哉)
ソフトバンク対阪神 6回表阪神2死二、三塁、先制の2点適時二塁打を放ち、ベンチに向かって手を挙げる大山(撮影・岩下翔太)
ソフトバンク対阪神 6回表阪神2死二、三塁、先制の2点適時二塁打を放ち、ベンチに向かって手を挙げる大山(撮影・岩下翔太)