夢を乗せて、ついに動きだした。23年春に開場する日本ハムの新球場「エスコンフィールド北海道」の開閉式屋根が9日に初めて完全に閉じられた。屋根を動かすためのカギとなる駆動台車は、北広島市に本社を置く中山機械が製造。新球場から徒歩10分ほどにある創業110年の老舗会社が、開閉式屋根に一役買っている。【取材・構成=田中彩友美】

日本ハム新球場・エスコンフィールド北海道の可動式屋根の全閉テストが9日に行われた
日本ハム新球場・エスコンフィールド北海道の可動式屋根の全閉テストが9日に行われた

駆動台車は地元の中山機械が製作

曇天の6月9日。エスコンフィールド北海道の目玉となる開閉式屋根が、最終局面を迎えた。「3、2、1…」。地上にいる作業員のトランシーバーからカウントダウンの声が漏れ出すと、目を凝らさないと分からないぐらい超スロースピードで屋根は動き始めた。作業開始から約8時間後の午後4時25分。可動可能な全長130メートルの屋根が全閉した。

午前8時22分
午前8時22分
午前9時40分
午前9時40分
午前10時11分
午前10時11分
午前10時37分
午前10時37分
午前11時50分
午前11時50分
午後4時22分
午後4時22分

5月から作業開始し、この日は残り58メートルを4回に分けて閉められた。新球場の設計・施工を担う大林組・岩田地崎建設JV工事事務所の竹中秀文所長は「駆動台車は、地元の中山機械さんで作られました。精度よく作って頂いたので、そういうことも効果があったのではないかと思います」。約1万トンの屋根は24台の駆動台車によって可動。新球場から徒歩10分ほどにある、創業110年の中山機械で制作された。

中山機械に白羽の矢が立ったのは4年前。ソフトバンクの本拠地ペイペイドームの開閉式屋根の設計に携わった三菱重工機械システムが、製作担当に中山機械を推薦したことが始まりだった。エスコンフィールド北海道から近いことも利点になった。同社の西村隆朗社長は「新球場に、何か関連する仕事をやりたいなと思っていたんです。コスト的にも非常に厳しいところもあったんですけど、こういう仕事って一生のうちに何回もできる仕事ではないので、ぜひ、やらさせて下さいということで受けさせてもらいました」と振り返る。

1台負荷1000トン 力を分散斜めに設置

駆動台車1台への負荷は約1000トン。大型車約50台分の重さに耐えられるためのテストは、室蘭市の工場で油圧プレスによって行われた。製作担当の市田泰士さんは「ペイペイドームの台車の、だいたい1・5倍か2倍くらいのスケールでした。ちょっと身の丈に合うかどうか…というところが正直ありました」。2年間の制作期間を経て、今年3月に完成した。屋根の重さ約1万トンに、雪を考慮した計2万トンを支えるため、台車は垂直ではなく斜めに設置。力を分散するための工夫を施した。

完成後約25分で全閉可能に

完成後は約25分で全閉可能となる。西村社長は「結構早いです。人がゆっくり歩くくらいのスピード」と言う。天然芝のグラウンド+開閉式屋根を併せ持った球場は日本初。「野球が始まると、きっとここまで歓声が聞こえてくると思うんですよ。歓声を聞きながら仕事するのも非常に楽しみにしています。仕事終わったら、すぐに見に行けますしね」と西村社長。地元企業の夢を乗せて、巨大屋根は動き始めた。

エスコンフィールド北海道の可動式屋根の全閉テスト全景
エスコンフィールド北海道の可動式屋根の全閉テスト全景

選手が語る新球場(3)

根本悠楓投手(19)

20年の新入団発表以来、見学には行けていないんですが、他の選手から話はよく聞きます。ウエートルームが、めっちゃデカいとか。客席までも近いと聞きますし、他の所にはない要素が多いと思うので楽しみが大きいです。声援は耳に入ってくるタイプ。相手チームの応援が、ちょっとテンポが速くなったりすると、ちょっと嫌だったりします(笑い)。ファンの方が3ボールになったときに拍手してくれるのは、すごいなと感じていました。投げやすいですね。

母校の苫小牧中央のグラウンドは結構、整備を丁寧にやるんですよ。入部したときは、すごいな~とビックリしました。練習前にやるところは結構あるんですけど、練習終わったら長いんです、整備が。丁寧にマウンドを1回掘って、少しずつ固めて。基本は3年生が整備して1、2年生は水をくんできて、3年生が少しずつ土を埋めていく。それを1、2年生が踏んで。1年生のときは石拾いもしていました。コツは水を入れすぎないこと。入れすぎるとベチャベチャになる。ある程度、いい具合に入れて、少しずつ固めていく感じですかね。