絶好調男が、プロ入り初の開幕1軍切符をつかみにかかる。オリックス西村凌外野手(24)の勢いが止まらない。

「意識は好球必打ですね。なんでも手を出さないこと。打てるカウント、打てると思ったボールを捉えるように心掛けています」

全体練習再開後の紅白戦で、存在感をアピールしている。25日にドラフト1位の宮城から右安打。26日に3安打をマークすると、27日は2安打1四球。28日の第1打席にもヒットが出た。紅白戦4試合で11打数7安打の固め打ち。実戦再開後の打率は驚異の6割3分6厘だ。「自分の調子に関係なくヒットが出てるのは良いこと。必死にやっている中で、1日が終わったときに充実しているなあと感じています」。野球漬けの毎日を、今、心から楽しんでいる。

「小さい頃から、ずっと野球をやってきたので…。突然、野球ができなくなったということに違和感があった。1日でも早く球場で野球がしたいなという気持ちでした。だから…。すごく楽しいんです、今」

しみじみと語るのも無理はない。新型コロナウイルスの影響で当初3月20日だった開幕は延期。大阪・舞洲での自主練習を余儀なくされた。3密を避けるため、練習時間も限られた。それでも…。つかんだ感触を離すまいと、必死にもがき続けた。「(打席で)足を上げていたんですけど、今は『すり足』にしてます。あの試合で試して結果が出たので、この自粛期間で取り組みました」。

西村が言う「あの試合」とは3月21日の楽天戦(楽天生命パーク)だ。昨季、チーム全体で打率1割2分8厘と苦しんだ左腕・松井から2安打を放った。「左投手を打たないと、自分の生き場がなくなるので。去年(自分は)全然チームに貢献できていない。1軍の試合に出ることで、勝利に貢献できる。1軍に居続けるためには結果を出し続けるしかないんです」。プロ2年目の昨季は19試合に出場して打率2割6分5厘、2本塁打、4打点。今季は、もっと数字を積み上げるつもりだ。

好調の理由は「すり足」だけでない。「ヒッチ(グリップを上下すること)を小さく。どんなピッチャーが相手でもタイミングが遅れないように。この期間でその数センチの幅への意識が強くなりました」。力感なくタイミングを取り、ポイントに来たボールをしっかり捉える。シンプルな発想が、西村を強くする。

西村監督も「絶好調ですね」と太鼓判。西村の躍動に「良いところを見せてくれている。(結果を出すと)1軍に置いておかないといけなくなる。結果を出してくれているので、チームにとって良い盛り上がりになる」と好評価だ。

それでも慢心はない。光る汗が、隠れた努力を証明する。「開幕まで1軍に残れたら(シーズンで)チャンスがもらえるのかなと思っている。立場が確立されているわけじゃない。なんとか食らいつきたいんです。生き残るために粘りますよ!」。

必死に練習したから結果が出る。自信も湧く。絶好調の裏には、心の支えがある。【オリックス担当=真柴健】

2回表紅組無死、西村は西村監督(後方左)が見守る前で左前打を放つ(撮影・加藤哉)
2回表紅組無死、西村は西村監督(後方左)が見守る前で左前打を放つ(撮影・加藤哉)