ぜんそくのためキャンプを離脱した阪神の西勇輝投手には、早く回復してプロ野球初の快挙へ挑戦してほしい。「開幕投手による、2年連続本塁打」だ。

昨年6月19日の巨人戦(東京ドーム)で開幕投手となった西勇は、3回にシーズン初打席に立った。菅野の147キロ直球に無心でバットを出すと、打球は左翼ポール上部を直撃。無観客の球場内に阪神ベンチの歓声が響く中、西勇はベースを1周した。阪神のシーズン第1号本塁打が投手のバットから生まれたのは、球団初だった。

開幕投手による本塁打は、阪神の御園生崇男が1938年(昭13)4月29日阪急戦で記録したのがプロ野球初。球団では82年ぶり2度目の出来事だった。開幕戦で先発した複数の試合で本塁打の投手は、過去2人。金田正一が国鉄時代の62年大洋戦と、巨人移籍後65年中日戦で記録した。もう1人は大洋(現DeNA)平松政次で、71年ヤクルト戦と75年巨人戦で放っている。いずれも間隔を空けてのもので、連続年ではない。

昨年の西勇は1号を打った後、5回には左中間へ適時二塁打。試合には敗れたものの、チーム全2得点をたたき出した。これで乗ったのか、昨季の7打点と10塁打はセ・リーグ投手最多だった。「プチ二刀流」として自らを助けている。今季開幕戦の3月26日ヤクルト戦は、狭い神宮での試合だ。安定感抜群の投球に加え、意外性あふれる打撃も楽しみに見つめていたい。

ところでその西勇には、実はライバルがいる。広島の開幕投手が濃厚な、大瀬良大地だ。昨年の開幕戦DeNA戦の9回に、国吉から駄目押し2ランを放ち完投勝利を飾った。同一年の開幕戦で2人の投手が本塁打は、史上初だった。大瀬良も西勇と同じく「開幕投手として2年連続本塁打」に挑む資格を持つ。広島は今季の開幕戦を、マツダスタジアムで中日と戦う。今季セの開幕戦は、全試合午後6時プレーボール。もし「2人そろって2年連続」となれば、なんとも痛快だ。両球団のエースによる、異色のホームラン競争を楽しみにしたい。【記録室=高野勲】