#小中高の球児たちへ 昨年まで巨人で投手コーチを務め、現在日刊スポーツでコラム「小谷の指導論~放浪編」を連載中の小谷正勝氏(75)。野球がしたくてうずうずしているみんなに向けて“おうちトレ”のヒントを挙げてくれました。「小谷の指導論~GW特別編」で、充実のステイホーム週間を送ろう!
外でボールを追えない。野球が大好きな子どもたちにとって、これほどかわいそうなことはない。
報道で見聞きする程度しか新型コロナウイルスの知識がなく、希望を持てる言葉が見つからない。ただ「大変だ、大変だ」と言っているだけでは前に進まない。今できることを考え、未来への希望を持ち続けることが大切なんだと思う。
外で体を動かすことはできなくても、野球の技術を高める上で重要な「工夫する力」「想像する力」を鍛えることはできる。
特に投手には「あの部分からボールを曲げて、あのポイントに収める。そのために、このタイミングで、この強さでボールに力を与える」という、空間を把握して、軌道をイメージする能力が欠かせない。まどろっこしく書いたが、要は「センス=微妙な感覚」という言葉に集約される。センスは天性…とあきらめていては進歩がない。創意工夫と想像力を鍛え、センスを磨く努力をすることだ。
野球ができず、親御さんと一緒に過ごす時間が多い今の環境で、ぜひチャレンジしてもらいたいことがある。料理だ。
1つの食材で、4回料理を作ってみよう。ルールはお父さん、お母さんが絶対に口出ししたり、手伝ったりしないこと。徐々に段階を上げていきたい。
(1)好きなように
自分で考えながら、好きなように作っていく。初めてだと、いろいろ苦労するだろう。あれこれ頭を巡らせよう。
(2)見た目綺麗に
1回目の反省を生かしながら、見た目をきれいにするにはどうするかを考える。
(3)おいしく
見た目の次は味だ。調味料の分量や焼き具合を考えながら、作り方を考えていく。
(4)おいしく、見た目も綺麗に
3回目までの積み重ねを生かして、最後の仕上げをする。
頭で考え、目で対象を捉え、最後は指先に集中して、繊細にイメージを形にしていく。力任せで思いっきり投げるフォームから始まり、順序よく力が伝わって、理にかなっているから美しく見えるフォームに成長していく…。投球と料理は似ている。自分で考えることが何より大切で、センスを高める唯一絶対の条件である。
「添えもの」にもこだわり料理を深めれば、センスはさらに洗練されていく。余裕が出てきたら先の(1)~(4)と同じステップで取り組んでみたい。
1匹のタイが主の食材だとしよう。私なら3枚におろし、半身を刺し身、もう半身は焼き物、頭と骨は煮物にする。ただ、それぞれに何を添えるかを考えていくと、3品とも無限の広がりを見せるから面白い。主役を一気に引き上げる面で、料理の脇役は、主役と同等の力を持っている。
投球もまったく同じである。自分の最も得意な球を生かす球種は、何なのか。打者を打ち取る勝負球から逆算し、初球からどんなレシピで組み立てていくのか。自分で考えて、イメージを高めて、形にしていく。このサイクルを日常生活から習慣とすることで、センスは身に付く。
食材は、可能な限り「旬」を選びたい。季節のものを食べることが、強い体を作る上では一番いい。作った料理はみんなで食べよう。食べながら、1日5分でも10分でもいい。家族の前で1人で話すことも日課にしてはどうだろうか。頭で考えて組み立て、言葉で表現する。スピーチも料理や投球との共通点がある。
◆小谷正勝(こたに・ただかつ)1945年(昭20)兵庫・明石市生まれ。国学院大から67年ドラフト1位で大洋入団。通算10年で285試合に登板し24勝27敗6セーブ、防御率3・07。79年からコーチ業に専念。11年まで在京セ・リーグ3球団で投手コーチを務め、13年からロッテで指導。17年から昨季まで、再び巨人で投手コーチを務めた。




