#小中高の球児たちへ 昨年まで巨人で投手コーチを務め、現在日刊スポーツでコラム「小谷の指導論~放浪編」を連載中の小谷正勝氏(75)。野球がしたくてうずうずしているみんなに向けて“おうちトレ”のヒントを挙げてくれました。「小谷の指導論~GW特別編」で、充実のステイホーム週間を送ろう!
野球に結び付く「おうちトレーニング」で体を鍛えよう。年齢や体力に合った強度、回数を考えながら取り組むことをお勧めする。
(1)裸足ストレッチ
呼吸を止めず、伸ばすところを意識して、痛いと感じる1歩手前まで伸ばす。ストレッチに限らず、家の中での運動は「はだし」で行おう。投球時は必ず軸足1本で立つ。選手に「スパイクの中の指でも、しっかり土をかむ意識を持て」と指導したことは多い。自分の体重を足の裏、指で感じることは、バランス感覚を養う上で非常に大切。リラックスが前提だが、立ってストレッチする場合は足の裏にも意識を持つといい。
(2)腕立て伏せ
腕周辺の筋力アップ、指先の感覚が良くなることにつながる。背筋を真っすぐに伸ばし、手のひらで支えるが、物足りなくなってきたら5本指で支える。次は3本、親指、人さし指、中指…と変えていく。指の力に自信のない人は壁などを利用し、角度を変えてもたれかかってもOK。家族に膝を持ってもらい、手押し車で前進するのも効果がある。
ボールを投げる時に「指の力」は大事になる。インパクトの瞬間は指先を使うし、指を鍛えればコントロール、スピードなどに結び付く。テニスボールを握るのも、指や握力を鍛えるのに適している。
こんな逸話がある。「フォークボールの神様」と呼ばれる杉下茂さんとすしを食べた時、あがりの湯飲みを中指と人さし指で挟んでお茶を飲まれていた。
同じくフォークの達人だった佐々木主浩も、何をする時も常にボールを挟んで持ち歩いていた。人前ではやらなかったが、空の段ボールに米を入れ、テレビを見ながらでも腕を突っ込んでいるとも聞いた。米を握り締め、中指と人さし指で挟んで強化していたのだろう。2人とも、フォークは指でボールを挟む力が特に大切であると分かっていた。少し話がそれたが、名を残した方々は自分なりに工夫し、体や技術を磨き上げていったのである。
(3)スクワット
投球時に応用できるよう、適度に曲げた膝を、つま先方向に真っすぐ向けるようにする。そして、やや重いものを持って歩く。この時、膝と肘は少し曲げ、背筋を伸ばす。いわゆる「モンキー歩行」は、各部位を痛める確率が低いとされている。下半身が安定し、柔軟性や足の筋力、お尻回り、体幹強化などにも結び付き、投球時に必要な箇所をまんべんなく鍛えられる。
(4)ジャンプ
庭などがある家は、膝が胸のところまでくるように抱え上げ、ジャンプする。難なくできる人は「ケンケン」でトライするのもいい。バランスに加えリズム感、瞬発力も養え、投球だけでなくフィールディング時にも生きてくる。可能なら「穴掘り」もお勧めする。横浜時代、野村弘樹にスコップを持たせ「穴を掘れ」と指示したことがある。全身の筋力を養うのに非常に効果がある。
(5)階段トレ
2階建ての家やマンションにお住まいであれば、歩幅、回数、スピードなどを工夫した階段昇降をしよう。つま先だけで上がったり、足全体で上がったりすれば、鍛える箇所に変化をつけられる。同時に足のバランス、体全体のバランスも身に付く。
入団当時の佐々木主浩は手術明けだった腰をかばい、かかと体重でしか走れなかった。かかとの低い靴を履かせ矯正し、つま先主体のランニングにトライさせた。単純動作でも「どこを鍛えるか」の意識を強く持てば、着地する足裏のピンポイントまで感覚が研ぎ澄まされていく。
(6)ほふく前進
携わってきた若手のほとんどが体験しただろう。肩甲骨、股関節の動き、身体の使い方をスムーズにするのに一番いいと考えている。
上下のバランスで動くことが大事になる。体、特に股関節の硬い人、身のこなしが下手な人はどうしても早く前に進もうとする。早く進もうとすると頭が高くなり、頭が高くなると敵に撃たれやすくなる。なぜ、ほふく前進するのかを分かっていないからこのようなことが起こる。トレーニングも同じ。どこを鍛えているかを常に意識し、ゆっくり、大きく動くこと。
最後に、私が影響を受けた俳人の種田山頭火が詠んだ1句を送りたい。
ひとりひっそり竹の子竹になる
竹は、切っても切ってもじっくりと成長しながら生えてくる。大変な時期でも、竹のように、毎日少しずつ成長していけばいい。
■シャドーと実技の反復お勧め
実践編として、シャドーピッチングを紹介する。投球動作の順序を並べると、目標を狙って絞る「目」から「足の裏→足首→膝→腰→肩→腕→手首→指先」となる。シャドーでできないことは、絶対に実技でもできない。人間は欲望が強く「コントロールよく」とか「より強い球を」と意識すると、順序が狂う。狂いがなくなるまで、シャドーと実技を反復していく。
ヤクルトのコーチ時代、「本当のシャドー」に出会った。ユマキャンプでの夜、シャドーの練習をしていた時。ギャオスこと内藤尚行が突然、サインを確認する動作を取った。「何をしとるんや」と見ていると、打ち取ってベンチに戻る場合、打たれた場合のベースカバー、三振を奪ってのガッツポーズまで…ゲームセットまで繰り返した。単調な繰り返しを避け、実技と擦り合わせる作業としてお勧めする。
◆小谷正勝(こたに・ただかつ)1945年(昭20)兵庫・明石市生まれ。国学院大から67年ドラフト1位で大洋入団。通算10年で285試合に登板し24勝27敗6セーブ、防御率3・07。79年からコーチ業に専念。11年まで在京セ・リーグ3球団で投手コーチを務め、13年からロッテで指導。17年から昨季まで、再び巨人で投手コーチを務めた。




