侍ジャパンのメンバー選考は、本当に難しい。大会が始まってしまえば、選手の調子を見極める時間が絶望的なほど短い。よほどのアクシデントがなければ変更もできない。それだけに“超”が付くほどメンバー選考が重要になる。私自身、選手としてWBCとオリンピック(五輪)に参加した。その経験から実感したことだが、WBCと五輪では、メンバーの選び方が違ってくると思う。

宮本氏が選ぶ侍ジャパンスタメン
宮本氏が選ぶ侍ジャパンスタメン

一番の違いは、時期的なもの。WBCはシーズン前だが、五輪はシーズン途中で開催される。簡単に言うと、WBCはオフシーズンの過ごし方などを熟知し、経験と実績がある選手を選ばないといけない。そうした過程で本番前の合宿もできるし、壮行試合もできる。その中で選考していく流れになる。

一方、五輪はシーズン中であり、その分、選手のコンディションや調子は見極めやすい。その半面、直前の合宿や壮行試合は満足にできない。特に難しくなっているのは、ここ1年ぐらいで選手の勢力図が大きく変わってきている点だろう。今季は新人選手やプロ入り2年目ぐらいの若い選手の活躍が目立っている。日本球界全体で、世代交代の時期に入ってきている。

若い選手で難しいのは国際大会やプレッシャーへの適応能力の見極め。こればかりはやってみないと分からない。しかし、WBCと違い、五輪で使用するボールは日本製で、メジャーで使っているボールより違和感が少ない。野球が盛んでない国の球場はグラウンドコンディションもビックリするぐらい悪いところがあるが、今回は日本で開催するため、球場にも慣れている。それなら実績を重視するより、今現在の状態を優先して選考した方が得策だろう。

宮本氏が選ぶ五輪代表
宮本氏が選ぶ五輪代表

野手は各ポジションで、2人以上が守れるように考えてみた。それ以外には右打ち左打ちのバランスや代走なども考慮したつもり。あくまでも現時点での選考で、一番の問題はケガで離脱中の巨人坂本の状態。年齢や実績、実力的にもチームの支柱になる選手。遊撃というポジションも、捕手に次いで特殊な技術が必要。どのような状態で戻ってこられるか、こられないかによってメンバー構成や戦術面で大きく変わる。

投手の編成は斬新なメンバーになったと思う。本来なら野手を14人にし、投手を10人にしたいところ。しかし、現在の調子を一番に考えると、若い選手が多くなる。未知数のある選手や、酷使するわけにもいかないため、11人の編成にした。

一番のキーマンはオリックスの山本で、先発か抑えかで悩んだ。抑えにはルーキーの栗林と楽天の松井で、不安があるようなら山本を抑えに回せるように考えてみた。オリックスの宮城、巨人の高橋優は実績こそないが、今季の活躍は本物。国際大会は左腕の相性がいい。他のリリーフは球威を重視して選んだ。

投手で問題なのは、右肘の故障で離脱している巨人の菅野。万全なら文句ないが、今季は調子もいまひとつ。復帰に間に合っても、どのぐらいの状態かによって違ってくる。間に合わないようなら、中日の柳か、楽天の早川あたりが候補として挙げられる。(日刊スポーツ評論家)