第94回選抜高校野球大会(3月18日開幕、甲子園)の出場校32校(一般選考枠28校、神宮大会枠1校、21世紀枠3校)を決定する選考委員会が28日に開かれ、発表される。21世紀枠候補の只見(福島)は前日となる27日、同校で練習を行った。過疎高齢化が進む町で、春夏通じて初めての甲子園出場という吉報を待っている。

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雪が降りしきる奥会津で春の訪れを待っている。1976年(昭51)創部の只見は昨秋、全季通じて初の県8強入りを果たした。新潟との県境にある只見町は日本有数の豪雪地帯。11月から約4カ月は積雪でグラウンドが使用できない。厳しい環境下での快進撃が評価され、東北地区推薦校に選出された。長谷川清之監督(55)は「実戦練習ができない期間が長いので、やることは毎年同じです。(推薦校に)選ばれてからは彼らの目も変わってきました」とほほえんだ。

雪が積もった只見の校舎(撮影・相沢孔志)
雪が積もった只見の校舎(撮影・相沢孔志)

雪を言い訳にしない。室内練習場はなく、主な練習場所は体育館や駐輪場。バドミントンの羽根打ちやトス打撃でバットを振り込み、体育館では2階からボールを投げてもらい、飛球の背走練習に取り組む。晴れた日は雪上を走って下半身を鍛えてきた。吉津塁主将(2年)は「地味な練習ですけど、グラウンドに出たときに結果が出ます。チームで徹底してやろうと話しているので、集中して取り組んでいます」と力を込めた。

山奥にある同町の人口は55年の約1万3000人をピークに減少。現在は約4000人で、過疎高齢化が進む。同校は02年から町と提携し、親元を離れて自立を希望する生徒に宿泊施設を提供する「山村教育留学制度」を導入した。会津若松市出身の室井莉空内野手(2年)は「会津では親が洗濯などをやってくれるという甘えがありました。自分のことは自分でできるようになりたかった」と進学を決めた。

初めて訪れた際には「会津と雪の量が全く違うので、びっくりしました」と目を丸くした。それでもこの環境下でできる練習に励み、昨夏以降は守備力を強化。「結果的に守備からリズムを作って勝ち進めた」。秋は終盤まで粘り、接戦で1つずつ白星を積み上げた。長谷川監督は「試合を重ねるごとにミスが少なくなった。失策や四死球で先頭打者を出してもすぐに切り替えて、今は何をすべきなのかを選手たちは分かってきた」と成長を実感した。

発表前日のこの日も、体育館などで約2時間調整し「運命の1日」に備えた。吉津は「明日の朝から緊張していると思いますが、1カ月以上ずっとチームでやってきたことを信じて、良い結果を待つだけかなと思います。(保護者や地域に)甲子園でプレーするという形で恩返しがしたいです」。町に活気を与える「甲子園出場」が目の前まで来ている。聖地を夢見ながら、高まる思いを抑えてその瞬間を待つ。【相沢孔志】