一連の球界再編問題を振り返る上で、堀江貴文氏(46)は絶対に外せない人物だ。近鉄とオリックスの合併に待ったをかけ、近鉄の買収に名乗りを上げた。「ライブドア」は参入を果たせなかったが、閉塞(へいそく)感が充満していた当時の球界に風穴をあけた。

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2004年(平16)11月2日。オーナー会議で楽天の新規参入が承認され、堀江の挑戦は終わった。

仙台市内のホテルで会見を行った後、改修前の宮城球場へ。テレビの生放送に出演した。「応援していただいた方には申し訳ない。球界が発展するよう、草葉の陰から祈っている。12球団を維持し、仙台に新球団ができた。ファンが思っていた流れになったのは良かった」。グッドルーザーを貫いた。

今、プロ野球の球団経営に興味はないという。「僕が今、球団を持つ意味、あります? 当時のライブドアはマイナーな会社でした。株式市場やIT業界では有名でしたけど、一般には誰も知らない会社だった。元々、会社を有名にするためにはどうすればいいか、ずっと考えていた。でも今『有名にしなきゃ』みたいなモノがない」。

球界ビジネスには絶対に鉱脈がある-。堀江が突出していたのは、縮小一辺倒だった平成中期の大きな潮流に「待った」をかけた嗅覚と、先見性だ。楽天、ソフトバンク、DeNA。次々と参入して成功し、つられるように球界が息を吹き返していった。最初に立ち上がり、わだちを踏む人がいなければ、球界はどこへ進んだか分からない。

「当時、球団なんて絶対にもうからないと言われていた。誰も気付いていなくて、僕がやらなきゃ誰もやらないことを、やる。だから面白かったんです。もう、みんな知ってるじゃん。僕が、わざわざやる必要はない。分かっていることをやっても、つまらないじゃないですか」

出身に本拠地を置くプロバスケットボールB1リーグの「ライジングゼファー福岡」で取締役を務め、Jリーグのアドバイザーも務めている。

「ほとんどの日本人は、Bリーグが盛り上がり始めていることに気付いていない。12人しか登録ができず、野球の予算の5分の1で経営できる。少子化の中で競技人口が多く、絶対メジャーになっていく。雨の心配がなく、コンサートにも使える『アリーナビジネス』が、めちゃくちゃいいんですよ。サッカーも、アジアのプレミアリーグになる可能性があるんで、これも面白い感じです」

野球界の未来像はどう見ているのか。「NPBはエクスパンションすべきなんです。『16球団』という話はしてます」と即答した。

「プレーする人口が少なすぎて。中米、北米、東アジアしかない。だから東アジアで1リーグ、北米1リーグくらいしか成立しないんです。大リーグは90年代にエクスパンションして、16球団から30球団に増やした。あのときも、小差でエクスパンション派が勝った。1歩間違えたらメジャーも縮小して、日本人メジャーが活躍することも、なかったかもしれない」

シーズンの盛り上がりも変わってくる。「4チームずつで。セパ東西でレギュラーシーズンを戦える。面白いんじゃないかと思います。野球って、サッカーより試合数が多い。経営は全然、楽ですよ。新潟とか、静岡とか、四国とか、沖縄とかで成立しますよ。面白い会社が、手を挙げればいいじゃんと思って。ZOZOはもったいないよね。千葉にこだわりがある。でもロッテは、絶対に手放さないと思うんで。新潟とか静岡に行けば…可能性はありますよ、全然」。16球団のマッチングも、イメージがついている。(敬称略=つづく)【球界再編問題取材班】

04年11月3日付日刊スポーツ紙面
04年11月3日付日刊スポーツ紙面