期待大と見た。ソフトバンク高橋礼投手(22)右投げ、右打ちの将来である。今シーズン専大からドラフト2位で入団した新人。このコーナーのおかげでウエスタン・リーグを10年余り見続けてきたが、ひと目で惚れ込んだサブマリンは初めて。188センチの長身。体をグッと沈めたアンダーハンドからのストレートは、打者の胸元で浮き上がる下手投げ特有の球。この球があってこそ本格派のサブマリン。この球がないアンダーハンドは本物とは言えない。将来有望。少々オーバーかもしれないが、かつての南海(現ソフトバンク)故杉浦忠さん。阪急(現オリックス)の山田久志さんを彷彿とさせるフォームの持ち主。今季、弘前で行われるフレッシュオールスターにも選出されている。

 鳴尾浜球場、6月27日の阪神-ソフトバンク3連戦の2試合目だった。3回1死満塁のピンチでマウンドへ。初めに相対した坂本を浅い中飛に打ち取ると、続くアンダーハンドが苦手とする左バッター西田は高めに浮き上がる例のストレートで空を切らせて三振。厳しい場面を脱した。4回は四球を出したりはしたものの、相手の新外国人ナバーロ、5回には先頭打者のロサリオと両外国人を連続三振に仕留めた。なかなか見応えのあるピッチング。一緒にゲームを見ていた阪神佐野統括スカウト部長に大学時代の話を聞いてみた。「2年生の時はよかった。ちょっとコントロールに難はあったが、昨年もまずまずでしたね」やはり、各チーム注目していたピッチャーの1人だったのだ。

 同カードが終了した時点での成績は、15試合に登板。4勝0敗1セーブ、防御率は1・13。24イニング投げて27奪三振は球に力がある証拠。明くる日のゲームも1人だけではあったが、江越を三ゴロ。連投もOK。そして、何よりテンポがいい。相手バッターが早い間合いを嫌がってバッターボックスを外すシーンもあった。野手は守りやすいピッチャーである。

 こんなシーンもあった。ソフトバンクの久保ピッチングコーチを取材している時のこと。昨年まで阪神に在籍していた同コーチと一緒にファームで投手を担当していた高橋建、福原の両コーチが挨拶に訪れ「高橋君、きれいなフォームをしていますねえ。アンダーハンドの本格派ですね」の印象を語る場面があったほどの投手。

 久保コーチの期待も大きい。「いいピッチャーでしょう。往年の山田さん(現日刊スポーツ評論家)が投げていたような、打者の胸元へ浮き上がるストレートはありますし、アンダーハンドの投手として持つべきものを備えています。申し分ない素材です。そうですねえ。1軍レベルから見るとしたら、あとはコントロールされた落ちる球と、制度の高いスライダーです。現在は1軍の方からイニング制限の指示がありますので長いイニングは投げていませんが、もうそろそろ、こちら(ファーム)の判断で起用できるようになると思います。いずれにしろ経験です」楽しみにしている。

 1軍昇格。近いとは思うがまだ課題はある。制球力だ。見ていて感じたのは、ストライクとボール球がはっきりしている。これでは2軍で通用してもレベルの高い1軍のバッターとなると厳しい。27日の試合でも粘られて四球を連発した。それも、その回の先頭打者に与えた。ピッチャーであるなら、あってはならないこと。高橋礼本人も現在のテーマを「コントロールです。まだ自分の狙ったところへ思うようにコントロールできないことが多い。無駄な四球もあります。この世界に入って半年がたちましたし、プロとして、これからやるべきことは分かってきましたので頑張ります。少しでも早く1軍のマウンドに立てる力をつけたいです」と言う。確かにコントロールさえ身につけば間違いなく1軍昇格は見えてくる。フレッシュオールスターに選出された。どん欲に技術を吸収するチャンスと思え。【本間勝】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「鳴尾浜通信」)