「松坂大輔がホールインワンするところを2度、見たことがあります。ボクは」。にわかには信じ難い話をするのは藤川球児です。「本当ですよ。持ってる男は違うんですって」と笑って続けます。

 虎党はどこまでも阪神一色。それはそれで素晴らしいですが今春のプロ野球キャンプ、大きな話題の1つは中日に移籍した松坂です。本当に復活できるのか。あるいは。そんな注目が集まっています。

 第2クール初日の宜野座キャンプ。練習を終え、球場を出ようとする球児と話をしました。言うまでもない80年生まれの「松坂世代」。ともに大リーグでも投げ「球児世代」でもあるのですが、そこが松坂という男のすごさです。甲子園で春夏連覇の横浜高時代、あの快投から20年です。

 「今年はいいんじゃないですか。テレビで見ていて、腕の振りが全然違うなと思っていますけどね。まあ先発はどうかな。作りなおさないといけない部分はあるでしょうね。ボクはできなかったから。でも楽しみですよ」

 高校から直接プロ入りした同年齢の同期生で親交があります。メールもするし、この沖縄でも食事に出掛けたりしているそう。そんな話の延長で「ホールインワン」の秘話も教えてくれました。

 同時に球児の表情が明るいのも虎党にはうれしいことでしょう。金本監督率いる阪神はベテラン、若手の共存が目立ちます。野手なら福留、糸井、鳥谷のレギュラークラスにそれぞれ若手が挑戦する姿が目立ちます。

 投手陣でベテランといえば先発なら今季39歳になる能見を筆頭にこの日、ブルペンで大奮闘した岩田の左腕2枚でしょうか。そしてブルペンで控える球児の存在感は大きいといえます。

 今季も中継ぎでの仕事になるのは間違いないところですが何といってもブルペン陣の精神的支柱という立場。さらにいえば外国人投手も多いチーム事情で、大リーグ経験のある球児がいるのは意味があると思います。

 球児といえば99年に生で聞いた野村克也元監督のボヤきが忘れられません。「西武はドラフト1位で松坂を指名した。阪神は藤川球児やぞ」。マイナスの意味で、そういう話をしていました。確かに野村監督時代の99~01年に球児は戦力になれませんでしたが、「JFK時代」などその後のことは言うまでもありません。

 若手の台頭も面白いが中年になったこちらとしてはベテランが粘る姿を見るのもうれしいもの。復活に燃える松坂を横目に、スイスイと投げる球児の姿が見たいものです。【編集委員・高原寿夫】