阪神監督の岡田彰布には独特の直観力がある。例えば古い話で申し訳ないが、今岡が現役の時、不振で2軍調整していた。それが突然、監督の岡田が1軍に呼び寄せた。さらに先発で起用。すると本塁打を打った。使った訳を聞く。「エッ、知らんの? 今日(9月11日)、アイツの誕生日やんか」。驚きの理由だった…というのは有名な話だ。
同じ9月11日の甲子園。負けられぬDeNA戦の9回裏。1点を追い、打順は7番から。岡田は坂本をそのまま送った。てっきり代打を送るとみていたら違った。坂本はこの試合でスクイズを決めていた。何かがある。岡田の直観。すると相手のミスが出た。エラーで出塁…。ここまではイメージ通りだったが、あとが続かずに敗戦。あらゆる手を打っての負けだった。
この1敗をどう捉えるか。首位をいく巨人が9回に9点を奪うまさかの逆転勝ち。これでゲーム差は3・5に広がった。絶望感が一気に広がったが、岡田は試合後に「ひとつ負けただけやないか」と声を絞り出した。
9月22日、23日に甲子園で巨人との直接対戦が待っている。ここを迎えるまでにその差を少しでも詰めておきたい。連勝すれば、何かが起きる。そんな希望を残すためにも、それこそ勝ち続けるのみ-。
一方で、まったく字にならないのが岡田の去就問題である。2年契約の最終年。さあ、来年はどうする? といった話題が出ても不思議でない時期にさしかかっても、一切、表に出ない。本社、球団と水面下で話し合っているという節がない。優勝争いしている真っただ中、そういう話は、はばかれる…ということもある。
岡田自身、来年の話は一切、口に出していない。これまで何度も同じような状況下で、岡田を取材してきた。その過去の例からいうと、かなり正直な思いを吐露していた、という記憶がある。2012年のオリックス監督時代には「監督も契約社会の中のひとり。辞めろとなれば従うだけ。それが契約というもんやろ」と語っていた。
それが今回は「先」のことにはまったく触れない。2008年は優勝を逃がした責任を取り辞任。2012年には事実上の解任でオリックスを去った。あの時々とは状況がまったく異なっている。昨年、優勝し日本一に導いた。その監督の意思、意向が最優先される環境にある、というのが大方の見方になっている。
あくまで岡田次第。それがわかっているから球団は見守るしかなく、岡田もまた、連覇へチャンスをうかがっている。沈黙を保つ本社、球団。そして岡田もグラウンドに目を向けるだけ。この状態は最終結果がはっきりするまで続く。それをマスコミはどう報じていくのか。嵐のような熱い戦いのあとに、嵐のようなストーブリーグが待っている。【内匠宏幸】(敬称略)




