16日、都内の自宅でパソコンの前に座り、ある指導現場に潜入した。

オンライン会議システム「Zoom」の画面は5分割された。左上から時計回りに、元ロッテ投手で学生野球資格を回復した香月良仁さん(36)、記者、鹿屋体育大硬式野球部の藤井雅文監督(31)、治療院を営む松本彬トレーナー(32)、同大の結城陽平投手(2年=長岡大手)。香月さん、松本トレーナーは熊本市内。同大は鹿児島にある。離れた場所から一堂に会した。

講師役の香月さんが、ブルペンに立つ結城投手に課題を尋ねた。「軸足を蹴る力をボールに伝えたいけど、体が前にいってしまいます」と答え、投球を開始。途中で香月さんが「後ろからの映像を」とリクエスト。撮影役の学生コーチが後ろに回った。投球後、体の割りなど身ぶりを交え指導。藤井監督が「結城は股関節が硬い」と補足すると、松本トレーナーが股関節周りのトレーニングをやってみせた。学生コーチからも意見が飛ぶ。双方向どころか“5方向”で進んだ。

今やオンライン指導自体は、あらゆる分野で行われている。注目は、講師だけでなく、監督、トレーナーも加わった点。香月さんは「情報共有が選手ファーストにつながる」と力説する。16年にロッテ退団後、古巣の熊本ゴールデンラークスに戻り球団経営にも携わった。3月で退社し、自分の会社「R&Associates」を設立。野球の普及活動を目指していく。

今回は、オンラインでどれだけ可能かの実験だった。藤井監督は「コロナの現状もある。どこでもできるのはいい」と歓迎。課題も見えた。松本トレーナーは「リアルタイムで触れない。動きと会話で、どれだけ伝えられるか」。結城投手は「緊張しました。事前に動画を送るといいかも」。じかに会わない分、よりコミュニケーションが必要となる。

香月さんは海外への普及活動も考えている。以前インドネシアを訪れ、現地チームと交流した。既存ツールでも、これだけできる。後は、どうシステム化するか。「教える勉強にもなります」と目を輝かせた。【古川真弥】