いま欲しいのは「ゲームチェンジャー」だろう。失速してきた流れ、雰囲気を変えられる存在。左腕・高橋遥人の復活が待たれるのもそれが理由のはず。それならば…という話だ。

実にもったいない。今季好調の青柳晃洋が3回に5失点。きょうも負けか。甲子園にはそんな思いが充満する。しかし5回に打線が奮起した。6番糸原健斗の左前打から1四球を挟んで4連打。2点を返し、さらに1死満塁から“帰ってきたマルテ”が走者一掃二塁打。これで同点だ。

「おっ」と思わせたのは糸原に続いて安打を放った小野寺暖だ。7番右翼でスタメン。一塁方向へ流し打った当たりはビシエドのミットを弾き、右前へ転がる幸運な安打に。流れを変えるには運も必要だ。小野寺の当たりでつながり同点にできたことは、独断と偏見で言わせてもらえれば意味があったと思う。

そして同点の6回だ。5回同様、先頭で打席に入った糸原が内野安打で無死一塁。ここで小野寺に回る。ここも行け! と思ったがサインはバント。小野寺は投手のやや左側に転がしたが二塁へ送られ、糸原が憤死してしまう。アウトになった直接の理由はスタートがよくなかった糸原かもしれない。それでも…。

2カ月前も同じことを書いた。7月1日のヤクルト戦(甲子園)。同点の8回裏、無死一塁で途中出場の小野寺に打席が回るとサインはバント。これを決められず、捕手処理の併殺打という結果に終わった。9回にスアレスが4失点して負けた試合である。

当時も今もウエスタン・リーグ首位打者の小野寺はファームでの犠打は1つだけ。小技ではなく打撃を買われての1軍昇格なのは今も同様だろう。昇格した際に小野寺は「チームの雰囲気を変えられるように頑張りたい」と話した。まさに“ゲームチェンジャー宣言”なのだ。

小野寺の打撃に期待するのなら得点差の状況は違っていても5回同様、6回も強気に攻めてほしかった。なにより佐藤輝明の代わりに出している選手だろう。

連敗中であり、手堅くいきたい気持ちは分かる。それでも勝負を仕掛ける大胆さを忘れてほしくない。今季はそういうスタイルでやってきたではないか。巨人とヤクルトがつぶし合いする裏のこのカードはある意味、チャンスのはず。気持ちで“受け”に回ってはいけない。(敬称略)【高原寿夫】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「虎だ虎だ虎になれ!」)