カードの前から「2勝1分けなら阪神首位」という話があった。そんなうまいこといくかいな…と思っていたが、まさにその通り、お釣りなしの「2勝1分け」。おまけにこの試合は6点差をつけられてから引き分けに持ち込んだのだから勝ったようなものだ。阪神にとっては願ってもない巨人3連戦になった。

その“勝因”は多い。選手の踏ん張り、粘りはもちろんだが腹をくくったような指揮官・矢野燿大率いる阪神ベンチの采配もなかなか大きかったと思う。この日、最大のそれは先発・秋山拓巳を2回であきらめたところからではないか。

「チャンスだったんで早めに行くしかないと思って」。矢野がそう振り返ったように3点を追う2回、2死一、二塁で秋山に代打を送る。しかし、これは実らず、2番手で藤浪晋太郎をマウンドに上げた。

藤浪は先発予定だった2日中日戦が雨天中止でブルペン待機していた。しかし「勝利の方程式」には、当然、入っていない。出るとすれば勝敗に限らず大差のついた展開、あるいはこの日のような“ロングマン”での起用しかなかった。

はたしてロングマンで登板した。いきなり2四球を出し、また制球難かと不安視されたがそこから粘り、2イニングを無失点。3イニング目に岡本和真に3ランを浴びたので結果としては失敗かもしれない。

しかし「藤浪ロングマン」というのは、ある意味で矢野阪神が目指す全員野球、一丸野球の象徴ではないだろうか。本来なら先発スタッフとしてバリバリ働いてほしい選手。だが長く続く不調から、なかなか脱却できていない。

それでも時は待ってくれないのだ。現状、貢献できる最低限の戦力として藤浪も力投した。過去の実績、プライドを考えれば、結構、難しいことだろう。それでも散髪し、ヒゲをそり落として1軍マウンドに上がった藤浪に気概を感じた。

「粘り強く投げていければ。(2軍戦では)いろいろな球種を使ってカウントを取ることができた。そういった部分を出したい」。2日の登板を前にそう話していた藤浪、その片りんはうかがえたと思う。

それにしてもベンチ対ベンチの3連戦だった。矢継ぎ早な継投など名将・原辰徳が繰り出す策に矢野も必死の「全員野球」で対抗した。それが「2勝1分け」という結果に結びついた。これは大きい。(敬称略)【高原寿夫】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「虎だ虎だ虎になれ!」)