沖縄生まれのバンド「かりゆし58」に「オワリはじまり」という名曲がある。名曲と書いたわりには数カ月前に友人に教えてもらうまで知らなかったのだけど。すてきな歌だ。

大人の理由で歌詞は書かないが、かけがえのない1日を過ごせたか、時の流れの早さを感じているか、と訴えてくる。よく言われるようなフレーズだけど、この曲のそれは響く。1度、聞いてみてください。

指揮官・矢野燿大が言いたいこともこれだろうと想像している。一瞬、一瞬に持てるものを出し切る。結果がすべてではない。全力でやることが大切だ-。「いい伝統を残したい」という矢野のポリシーである。

プロ野球選手に限らず、若い人はなかなか実感できないことかもしれない。それを分かってほしい。キャンプ前に今季限りでの辞任を明かす異例の行動に出た背景には、そんな願いもこもっている。当然、周囲の批判は予想できたし、悩んだが実行に移した。

それにしても。自分が今年で監督をやめることと、選手の気持ちのあり方が本当にリンクするのだろうかという疑問はある。キャンプ中、矢野にそれを問うたところ「若い選手はどうでしょうね。でも分かってくれるヤツはいると思う。その自信はある」と答えた。

本当に時が流れるのは早い。惜しい2位や…と思っていたら、もうシーズンが始まる。こわさすら感じるぐらいだ。それでなくとも気持ちが休まらない世の中。正体不明の焦りのような気持ちも感じる。

それでも、そんな中、またプロ野球を、阪神の戦いを楽しめる時間がやってきた。ありがたい。本当はそれだけを喜べばいいのかもしれないが、そこはやはりプロ。虎党がゲームを楽しんで、その結果、勝てば喜びは何倍にもなるのだ。

この日、矢野は虎番キャップたちに「やり方よりあり方」というフレーズを打ち出した。禅問答とまではいかないけれど、精神論が好きな男である。そして矢野が師と仰ぐ1人である闘将・星野仙一もバリバリ精神論の人だった。

「技術じゃない。最後は気持ちだ!」。こんな時代、キッパリとそう言い切れた闘将をうらやましく思う気もするけれど、表現は変わっても底に流れるものは同じだろう。さあ、最後まで相手に食らいつき、見る側を熱くする試合を、シーズンを展開してくれ。まずはそこからだ。(敬称略)【高原寿夫】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「虎だ虎だ虎になれ!」)