中日に甲子園で今季初黒星だ。プロ同士、いつもいつも勝てないのは当たり前だ。でもなんとなく釈然としない。スタメンの話だ。球界を代表する左腕の大野雄大には「左打者が苦手」という特徴がある。本人もこれを認めており、簡単に言えば右打者には胸元を突けるが左はそれが難しいというような理由だという。

今季もここまで左右別の打率はこんな感じだ。

右打者 192打数32安打 打率1割6分7厘 2本塁打

左打者 191打数55安打 打率2割8分8厘 4本塁打

この傾向はずっと続いており、例えば昨季も右打者は打率1割7分9厘に抑えているのに対し、左打者には打率3割3厘。一般に「左腕は左打者が得意」とされているが大野雄には当てはまらないということだ。

そしてこの日の阪神打線は2番・北條史也だった。最近では中野拓夢-島田海吏-近本光司の俊足左トリオが定番だが変えてきた。さらに6番に山本泰寛、7番に陽川尚将。陽川は過去に大野雄を打ったシーズンがあり、実績を買われたということだろう。

結果は7回無失点に抑えられた大野雄に対し、阪神は6安打を放ち、陽川はそのうち2安打をマーク。だが近本が2本、中野と糸原健斗が各1本と左打者のヒットの方が多かった。

もちろん指揮官・矢野燿大もその“特徴”は知っている。以前、虎番記者たちの取材に「それは分かっている」というような話をしていた。それにしては右打者を起用する傾向にあるのは不思議な気もする。

もちろんデータ、相性といったものがすべてではない。そのときの個々の調子や、それこそムードもあるだろう。それでもセ・リーグにあって阪神打線がここまで5試合で大野雄と対戦し、防御率1・89とセ・リーグのワーストに抑え込まれているのは事実だ。

だからこそ大野雄に対しては思い切って左を並べてみてはどうかと思うのだが。なんなら両打ちのロハスも左で立たせるとか。大野雄から4得点した6月24日の9回戦は普段通り、俊足トリオから佐藤輝明まで左が4人、並んでいた。

勝負に「たられば」はないけれど勝っていれば2位に浮上できていたナイターである。また5位か。せっかく9回にしぶとく追いついたのに。ベンチに糸井嘉男もいたな。グチばかり出る夜になった。(敬称略)【高原寿夫】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「虎だ虎だ虎になれ!」)