「おお~! また始まるなあ~!」。いつもと同じ元気な声はヘッドコーチの平田勝男だ。沖縄に出発する大阪・伊丹空港。あいさつするなり、背中をたたいてきた。また、始まる。まさにそういう感じだ。

勝っても負けても、ある意味ここで“初期化”されて新たなシーズンがスタートする。プロ野球に限らないが、そこがプロスポーツのよさだ。そんな希望に満ちた日に、少々、考えさせられる会話をした。

相手はある裏方さんだ。昨季、日本一に輝いた阪神では現場の首脳陣、フロント、職員にも“優勝ボーナス”が出た。その人物と少し雑談した。「ちゃんとボーナス、もらったかい?」。そんな問いかけに彼はどう答えたか。

「もらいました。こんなの初めてです。勝つのとそうでないのと、こんなに違うとは…と実感しました。でもね。(お金が)出ていくのも速い。なくなっても持っていたときの感覚のままになるのはこわい」

なるほど。「いったん膨らんだ生活は元に戻せない」。昭和ひと桁生まれの父親からよく言われたものだ。そんなものかと思ったが還暦を迎え、世の多くの方々同様に収入が減った今、その言葉が染みる。お金のあるなしより、自分の感覚が問題。そんなことを思い出させてもらった。

そこで思う。球団初の連覇が目標である阪神。しかし冷静に考えれば指揮官・岡田彰布が復帰してすぐ、日本一に輝いた昨年は、言い方はよくないかもしれないが“出来過ぎ”だった可能性もある。だが今季は勝つことが前提だ。それは当然でもある。チームも若く、伸びしろも多い。連覇どころか、3連覇以上を夢見ても何もおかしくない。

だが勝負は相手のあること。何より他球団は「打倒阪神」で来るのだ。「勝てるはず」という気持ちでいれば、うまくいかなかったとき「こんなはずでは」となってしまう。気持ちの問題である。そのためにも新戦力への期待は膨らむが、同時に主力格が悪くても昨季同様の力を発揮するのは重要だろう。

もちろん岡田はそのことを分かっているはず。口でどう言おうが、連覇が簡単だとは思っていない。だからこそ岡田の言う個人の「底上げ」が重要になってくるのだ。うまず、たゆまず、目を血走らせて向かってくる相手を返り討ちにしていく阪神の姿を見たい。そう思う2・1である。(敬称略)【高原寿夫】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「虎だ虎だ虎になれ!」)

練習を見守る阪神岡田監督(左)と平田ヘッドコーチ(2023年10月24日撮影)
練習を見守る阪神岡田監督(左)と平田ヘッドコーチ(2023年10月24日撮影)