えらいものを見てしまった。甲子園で、阪神相手に、巨人投手が無安打無得点となると沢村栄治以来の快挙だという。淡々と虎番キャップたちの取材に答えた指揮官・岡田彰布にその話をしてみた。

「甲子園で、巨人の投手がノーノーとなれば沢村栄治以来だそうです」-。

「ホンマ? 沢村栄治て…」。そう苦笑しながら岡田はロッカールームに消えたのである。

偉業は偉業として相手をたたえるしかない。しかし阪神にすれば、いよいよ打てないところを見せてしまったということか。首位に立ち続けながらも打線が課題の阪神。ついに、底が来たのか。そんな気もする夜である。

初めて無安打無得点試合を見たのは96年6月11日の西武-オリックス戦(西武)だ。イチロー擁するオリックス・ブルーウェーブが西武・渡辺久信にやられるのを眼前で見た。そのときの指揮官・仰木彬が発したコメントも覚えている。

「そんなん、1本、打ったからってどうやっていうんや。イチローが打つんなら、また別やけど」-。担当記者から「バントなどの策は考えなかったのですか」という質問に対して豪快な仰木らしく、そう話したものだ。

もちろんバント安打を狙うといった策は、場合によっては野球の不文律から言って、好ましいものではないという見方もある。それは別にして仰木が「それがどうしたんだ」という様子だったのが記憶に残っているのだ。

この日の岡田も同じ雰囲気だった。淡々と、ときに笑みを浮かべながら話していた。「明日(25日)、野手がどんなバッティングするかよ。もう終わったことやしの。どんだけ奮起するかやろうな」-。

確かにこういう負け方をしたからと言って、一気に5ゲーム差が縮まるとかそういうものではないし、1敗は同じ1敗。当たり前だが優勝の可能性がなくなるわけでもない。ちなみに96年のオリックスはその後、パ・リーグを連覇、日本シリーズでは長嶋茂雄率いる巨人を倒し、日本一に輝いている。

いい投手が来れば、なかなか打てないのも野球だ。とはいえ楽観しているわけでもない。打てないのは事実。この状態からいかに早く脱するか。一般に投手が苦しくなるとされる夏場に向け、こんな感じが続くのは本当によろしくない。(敬称略)【高原寿夫】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「虎だ虎だ虎になれ!」)

阪神対巨人 7回裏阪神1死、右飛に倒れる森下(撮影・前田充)
阪神対巨人 7回裏阪神1死、右飛に倒れる森下(撮影・前田充)
阪神対巨人 7回裏阪神2死、投ゴロに倒れる大山(撮影・前田充)
阪神対巨人 7回裏阪神2死、投ゴロに倒れる大山(撮影・前田充)
阪神対巨人 9回裏阪神1死二塁、一直に倒れる近本(撮影・前田充)
阪神対巨人 9回裏阪神1死二塁、一直に倒れる近本(撮影・前田充)