反撃の本塁打を放ちながら、こんなところで名前を出されてしまう。それが佐藤輝明のつらさということかもしれない。痛恨の1敗を振り返り、そんなことを思ってしまった。
サヨナラ負けのきっかけは間違いなく大山悠輔の失策だろう。延長12回、「9月スペシャル」でブルペン待機していた村上頌樹の2イニング目。1死から代打・野間峻祥の一ゴロを処理、一塁ベースカバーの村上にトスしたものの浮いてしまう。村上は捕球できず、1死二塁。ここで代打・末包昇大に痛恨の右翼越え二塁打を浴びた。
「ミスしたら負けるいうことや。大事なところでエラー出るもんな。開幕の京セラからやんか。村上はずっとエラーに泣いたよな」。試合後、実際に悔し涙を流していた村上について指揮官・岡田彰布はそんな話をしたのである。
ここでいう「開幕」とは本拠開幕、4月2日の京セラドーム大阪のことだ。1回表、1死一、三塁の危機。今季初登板だった村上はここで5番・牧秀悟を三ゴロに打ち取ったかに見えた。だが三塁・佐藤輝がはじく。結局、1回に4失点で村上は敗戦投手となった。
敗戦後の囲み取材でいきなり、そんな話が出てくるのが岡田のおそろしさでもあるのだが、確かにその試合はこのコラムでも「簡単にはいかないシーズンを予感させる敗戦だ」と締めている。百戦錬磨の岡田をしても減らない失策数は相変わらずの課題だろう。
それでも敗因がそれだけか、と言えば、それはどうか。この試合、広島も9回表に栗林良吏が失策している。ここから1死満塁まで勝ち越し好機が広がったが結局、あと1本が出なかった。「ひっくり返しとかなあかんわな。チャンスでな」。岡田もそう認めた9回、あるいはその前の8回でもうひと押しできなかったことも、やはり勝てなかった要因だろう。
9月になって一気に落ち込んできている広島も3位浮上の目はある。それだけに必死で勝ちに来ていたし、それは伝わってきた。相性のいい大竹耕太郎が1回にまさかの2失点する悪い流れを一時的にも変えたのは佐藤輝の1発だと思う。ここで何度も書いてきたが、こういう本塁打を打てる選手は、そうはいない。
だからこそ攻守で精進してほしいし、阪神を背負っていく姿をさらに見せてほしいと、佐藤輝には願うのである。(敬称略)【高原寿夫】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「虎だ虎だ虎になれ!」)







